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第11話 22歳、彼女の決意


 季節は春。

 大学二年に進級した僕は、これまで以上に彼女と過ごす時間を求めていた。

 そして迎えたその日――美玲さんは二十二歳の誕生日を迎えていた。


 レストランの個室でささやかな誕生日祝いを終えたあと、彼女は真剣な表情で僕を見つめて言った。


「……ねえ、私、決めたの」

「何を……ですか?」

「今日から、正式にあなたと“交際”する。秘密なのは変わらない。でも、自分の中でごまかしたくないの。舞台とあなた、両方大事にするって」


 その言葉に、胸の奥が熱くなるのを感じた。

 観覧車での口付け、公園での誓い。

 そして今日、彼女ははっきりと恋人として僕を選んでくれたのだ。


「……ありがとう。僕も、絶対に守ります。美玲さんとの時間を」

 そう告げると、美玲さんは少し涙ぐみ、そっと僕の手を握った。



 けれど、この関係を一番に伝えなければならない相手がいた。

 ――家族。


 その週末、僕は思い切って家族に打ち明けることにした。

 夕食を終え、リビングに集まった父・圭一けいいち、母・由美子ゆみこ、兄・拓真たくま、そして姉・麻衣まい

 四人の視線が一斉に僕に注がれる。心臓の鼓動が早くなる。


「……実は、話があるんだ」

 テーブルに手を置き、深呼吸してから言った。

「僕……朝倉美玲さんと、交際しています」


 一瞬の沈黙。

 やがて、最初に口を開いたのは母の由美子だった。

「……まあ。あの舞台の……?」

 母の目は驚きと不安で揺れている。


 父の圭一は腕を組み、しばし考え込んでから重々しく言った。

「お前、本気なのか?」

「はい。本気です」

 僕は真っ直ぐに答えた。


 兄の拓真が口を挟む。

「すごい人じゃないか。でも……簡単なことじゃないぞ。相手は世間の注目を浴びてるスターだ」

「わかってる。だからこそ、誰にも言わない。家族だけに伝えたかった」


 そして最後に、姉の麻衣がふっと笑った。

「やっぱりね。あんたの顔見てたら隠しきれてないんだもん」

 その言葉に、場の空気が少し和んだ。


 母は溜息をつき、父の顔を見てから小さく頷いた。

「……あの子があなたを選んでくれたのなら、信じるしかないわね。でも、ちゃんと守ってあげなさい」

「はい」


 こうして、家族だけが僕と美玲さんの秘密を知ることになった。

 外の世界に知られることは決してない。

 けれどこの家族の絆が、僕らの恋を支える土台になるのだと、強く感じた。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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