第2章：静かな村
オリビアの家までの道のりは、果てしなく感じられた。丘を縫う小道は、雨に囁く木々に縁取られていた。ボールドウィンは気づいた——鳥のさえずりが聞こえない。笑い声も響かず、ただ何か間違ったものの静寂だけが漂っていた。
村は、生きているふりをした墓場そのものだった。
昼間にもかかわらず、窓の鎧戸は閉ざされ、看板は蝶番で壊れたまま揺れ、わずかに姿を見せる村人たちは、空虚で恨みがましい目で睨んだ。
その視線はオリビアに注がれ、明確な軽蔑を帯びていた。
「名前は？」ボールドウィンは、緊張を破るように尋ねた。
「オリビア」と少女はそっと答え、声は雨音をかき消す程度だった。
「可愛い名前だ」とボールドウィンは微笑んだが、オリビアは黙ったまま、泥の道をじっと見つめた。
村は背後に消え、オリビアは彼を森の丘へと導いた。空気は冷たくなり、雨は霧となって服にまとわりついた。やがて、小さな空き地にたどり着いた。そこには、孤独に佇む壊れた小屋があった。
小屋は、幾多の嵐を耐え抜いたように疲れ果てていた。赤い屋根は所々で垂れ下がり、木の壁はひび割れ、歪んでいた。手入れされず雑草に覆われた小さな菜園。近くには、まるで家を守るように一本の木が立っていた。
「ここが君の家だな？」ボールドウィンが尋ねた。
「うん」とオリビアは震える声で答えた。「ごめん…でも、母を助けてくれたら何でもする。お願い、助けて。」
ボールドウィンは厳かに頷き、オリビアの後を追って小屋に入った。
中は湿気と冷気に満ちていた。家具はほとんどなく、大きな水瓶が三つと、賞味期限を過ぎた干し果物が少しだけあった。ボールドウィンの視線は、床に横たわる女性に落ちた。薄いシーツが、彼女を冷たい木の床から隔てていた。
彼女は、青白く病的な外見にもかかわらず、驚くほど美しかった。胸はかすかに上下し、まるで一呼吸ごとに戦っているようだった。額は汗で光り、頬は熱で赤く染まっていた。
ボールドウィンは彼女のそばに膝をつき、額に手を置いた。その熱は驚くほど高く、普通の人間ならすでに死んでいるだろうと彼は暗い思いで考えた。
「症状は？」ボールドウィンはオリビアを振り返り尋ねた。
「16日間、意識がないの」とオリビアは震える声で始めた。「時々動くけど…痛そう。いつも熱がすごく高い。まるで…昏睡状態みたい。」
ボールドウィンは注意深く耳を傾け、彼女の言葉を既知の情報と結びつけた。ホマ疫病は、報告の通り、普通の病気ではなかった。被害者は深い昏睡に陥り、身体は何か不自然なものに支配される。目覚めたとき、彼らはもはや同じ人間ではなく、人格は消え、記憶は失われる。さらに恐ろしいことに、目覚めた者は最初に見た者を殺し、時にはその血を飲み、姿を消すという噂だった。
彼はその恐ろしい詳細をオリビアに隠した。彼女にそんな恐怖を背負わせる必要はなかった。
「何ぼーっとしてるの？」オリビアが心配そうに尋ねた。
「なんでもない」とボールドウィンは小さく微笑み、強引に答えた。「ただ考えていただけだ。」
「…あんまり触らないで」とオリビアが警告した。「そうやって感染するって言うの。」
ボールドウィンは小さく笑い、女性の額に手を置いたままだった。「私なら大丈夫だ。」
オリビアが答える前に、小屋に低いうなり声が響いた。ボールドウィンは片眉を上げた。
「誰かお腹を空かせてるな」と彼は言った。
オリビアの顔が真っ赤になり、両手で顔を覆い、恥ずかしそうに背を向けた。
「大丈夫だ、オリビア」とボールドウィンは優しく言った。「何か食べ物はあるか？」
「…家の南に果物の木がある」とオリビアはつぶやいた。
「果物だけか？」ボールドウィンはため息を抑え、考えた。「これで生きてるのか…」だが、彼は平静な表情を装い、何事もないふりをした。
「どのくらい遠い？」彼は気軽に尋ねた。
「いや、裏庭よ。すぐ！」オリビアは答えを待たず、軋むドアを抜けて急いで外に出た。
オリビアが去ると、ボールドウィンは一瞬静寂に座した。外では風がざわめき、雨は止んでいた——だが、空気には何か…間違った気配があった。
それでも、彼は手を伸ばし、掌がかすかに赤く光った。彼女には何か——遠い記憶を呼び起こすものがあった。
「彼女に魔魂術を試してみよう」と彼はつぶやいた。「どこかで彼女を見た…でも思い出せない。おかしい——私の記憶が途切れるなんて。」
だが、彼はその考えを脇に置き、病に集中した。ホマ疫病の本質を理解する必要があった。噂が本当なら、これは病気ではなく、呪い——あるいはそれ以上の実験だった。
魔魂術——禁じられた技、医学というより神話に近い。多くの者はそれを信頼できず、危険だとさえ言った。実際、患者を即座に殺すリスクが高かった。ボールドウィンは以前使ったことを思い出した…生き延びた者もいたが、多くは死んだ。
彼は目を閉じ、エネルギーを女性に流し込み、彼女の病の闇の中で答えを探した。
意識が漂い——そして、無限の白い虚空に飛び込んだ。あらゆる方向に、巨大で生きている教会がそびえていた。その表面は、まるで生きているかのように脈打っていた。ドアも窓もなく、ただ永遠の高さと動く石だけ。
ボールドウィンは一つの巨大な建造物に近づこうとしたが、入り口は見当たらなかった。触れようとした瞬間、鋭い焼けるような痛みが頭に走り、集中が一瞬で途切れた。
「神の牢獄…？」ボールドウィンは考えた。「これは彼女の魂ではない——守られ、封じられている。」
彼は息を呑み、小屋に戻っていた。床に倒れ、額から血が滴っていた。混乱しながら、何が起きたのかを確かめた。目の前の壁には、彼が頭をぶつけた凹みがあった。明らかに攻撃されたのだ。
見回すと、一人の男がオリビアを掴んでいた。汚れた手が彼女の口を塞ぎ、彼女は蹴り、もがいたが、嗚咽はくぐもり、目に生々しい恐怖が宿っていた。
「私の変装は完璧だった」とボールドウィンは立ち上がりながら考えた。「普段なら、アビゾウの拳は山を砕く——なのに、この平凡な体に傷一つつけられなかった。それでも…ちっぽけな生き物が私を傷つけた。」
彼はニヤリと笑った。
「また弱さを装うか。ただの少年だと信じさせよう…」
「待て！何をしてる？」ボールドウィンは静かに、だが危険な響きで要求した。
一人の男が振り返り、嘲笑った。「ボス、ガキがまだ生きてる！」
「くそ！さっさと始末しろ！」リーダーが吠えた。
「下劣な輩には、優しさの意味がわからないようだ」とボールドウィンは言い、邪悪な笑みが唇に浮かんだ。「いいだろう…本当の優しさの意味を教えてやる。」
男は怒りに爆発した。「てめえ、何様だ！？下劣だと？ この生意気なガキが！」
男はナイフで突進し、鋼が空気を裂いた——
だが、ボールドウィンは見ずとも横に踏み出し、刃は数センチの差で空を切った。
「遅い」とボールドウィンは平然と言った。「その侮辱すら退屈だ。」
「くそくらえ！このガキ！」男が叫んだ。
「下劣って言葉が傷ついたか？」ボールドウィンは頭を傾け、冷たく微笑んだ。「感謝しろ。それでもお前よりマシだ。お前の父親でも、お前に言葉を無駄にはしない。その腕前と情けない性格…下劣は褒め言葉だ。」
男は苛立ちで唸った。「このガキ！やたら動きやがる！いいぜ、てめえの母ちゃんは俺たちの遊び道具だ。妹？ 最高値で売ってやる。」
ボールドウィンの表情が暗くなった。彼は指を一本上げ、目は抑えた怒りで輝いた。
「私は臆病者と共には立たない。病気の女と無防備な娘に暴力を振るう者からは、決して逃げない。」
彼の声は静か——あまりにも静かだった。
「誇れ。お前は魔王の力を見る。人間のいわゆる英雄でさえ、それを見るまで生き延びた者はいなかった。」
彼の指先に赤い火花がちらつき、一瞬にして、男は風船のようにはじけ、血の霧だけを残して消えた。
部屋は静寂に包まれた。残りの男たちは、恐怖でボールドウィンを凝視した。
リーダーの声が震えた。「こ、このガキは何だ！？」
「運がいいな」とボールドウィンは冷たく言った。「私が慈悲深く、迅速に終わらせてやる。」
彼は指を床に向けた。影が広がり、インクのように木の表面を這った。瞬く間に、影の手が現れ、うねり、掴み、男たちに伸びた。
集団は叫びながら、影の手に捕らえられた。まるで流砂に沈むように引きずり込まれ、一人、また一人と闇に消え、叫び声が響き、やがて静寂が訪れた。
ボールドウィンは不気味な静寂の中に立ち、影は床に退いた。彼は穏やかな態度に戻り、隅で震えるオリビアを見た。
「大丈夫か？」ボールドウィンは優しく尋ねた。
「あなた…人間じゃない…」オリビアは恐怖と畏怖の目で囁いた。彼女は壁に背を押し付け、距離を取ろうとした。
ボールドウィンは穏やかに微笑んだ。「魔術師だ。それだけ。それ以上でも以下でもない。」
彼は意識のない女性に戻った。「さて、許可してくれるなら…仕事を終わらせないと。」
オリビアは彼が近づくと怯えた。彼女の目は粘土の床に落ちた。
「もしそれが魔術師なら」と彼女は囁いた、「もう二度と悪魔には会いたくない。」
