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第46話



 「もういいんだ」


 「…おいおい」


 「ハルはハルで、自分のことに集中したら?」


 「集中してるし…」


 「嘘ばっか。じゃあなんで喧嘩なんてしたのよ」


 「たまには喧嘩くらいするっつーの」


 「うまく投げられないんでしょ?」


 「うるせーな。俺のことはいいんだよ」


 「いつもそうだよね?そうやって、自分のことは棚に上げてさ?」



 知ってるよ。


 ハルが大丈夫なことは。


 夏が始まる頃には、きっと良くなる。


 野球に真剣だったよね?


 うまくいかなくても、絶対諦めなかった。


 部活が終わっても、しばらくグラウンドに残ってた。


 知ってたよ。


 ハルが負けず嫌いだってことも。


 隠れて努力してたことも。



 羨ましかったんだ。


 ハルみたいに強くなれれば、どんなにいいだろうって。




 「上げてねーし」


 「はいはい」



 ハルなら、大丈夫。


 口先だけじゃないって知ってる。


 不器用なところもあるけど、それはそれで。


 彰君とも仲直りできるし、皆ともさ?




 「絶対大丈夫だって」


 「なにが?」


 「飛べないって思うから、飛べないんだ」


 「知ったような口ぶりだね」


 「…そんなつもりはねーけど」


 「ふふっ」


 「何笑ってんだよ」


 「…ああ、ごめん。ハルらしいなって思って」


 「あぁ?」


 「いつもこんなふうに励ましてくれたよね?お節介っていうかなんていうか」



 「なんで過去形なんだよ」って、やさぐれた声で。


 つい昨日のことのようだった。


 他愛もないことで話し合う、こんな会話が。


 彼がいなくなってから、時々考えてた。


 あの時、ハルが私に言おうとしていたこと。


 グラウンドに戻ろうって、言ってくれたこと。


 いなくなってわかったんだ。


 そう言ってくれる人が、身近にいたんだって。


 夢が叶うとか叶わないとか、そういうことじゃない。


 もっとずっと大事なことが、身近にあった。


 走って行ける場所があった。


 今しかできないことが、——そばに。



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