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第29話



 元の、…世界に?



 彼の元へと踏み出した先で、猫はそう言った。


 通り過ぎた時間は、もう巻き戻せない。


 私が迷い込んだ世界は、私の記憶の中であり、すでに変えることのできない事象の表面。


 水面を揺らすことはできても、海の形を変えることはできない。


 一度吐き出した言葉は、もう2度と、口の中に戻ることはない。



 かつて、私は1m80cmのバーを飛ぼうとしていた。


 重力に抗おうとしていた。


 空を飛べると信じていた。


 だけど、踏み切りはもうずっと後ろにある。


 走り出した足は、もう、巻き戻せない位置にある。



 私が今いる場所、——立っている場所は、「今」を失った場所に違いはない。


 足は地面の上にはない。


 だから決して、「飛ぼう」としてはいけないと言われた。


 過去でも、未来でもない場所。


 その境界に一度でも足を踏み入れれば、たちまち底の見えない闇に呑み込まれてしまう。


 一度そこに落ちてしまったら、もう2度と、「今」の自分に帰ることはできない。



 ——そう、言った。



 じゃあ、どうすれば?



 そう聞くと、微笑むように猫は言った。



 「もう一度、同じ時間を過ごせばいい」




 と。

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