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元勇者と元魔王令嬢のカップル


 リリスは今までにないくらいにグイグイと胸を押し当てるように迫ってきていた。


「なにをそんなにカップルにこだわってるんだ。結婚の話より食いつきがいいぞ、、お前!!」


「それは…その…人間たちがイチャイチャしてる姿を見ていいなぁって…」


 リリスは毛先を指先でクルクルさせながら言う。


 ーーただの嫉妬じゃねぇか!!


 そう思ってるとふと後ろから服を引っ張ってくる人物がいた。


 ピンクの瞳。ルルだ。


 ルルは俺を手招きして部屋の隅へ呼ぶと『しゃがめ』と手でアピールしてきた。


 きっと『耳をかせ』と言いたいんだろう。


 ルルの指示通り俺はルルが話かけやすいように片膝をつく形の姿勢をとった。


「アルス様、恐縮ではありますが今の姫様の状態は非常に危険です。妹の失言ではありましたがカップルという言葉は相当なパワーワードだったようです。申し訳ございません」


 ルルの言葉に俺は素直に感心した。


 ーーちゃんと会話できる子たちが魔族にもいるんじゃないか。


 続けてルルの話を聞いていく。


「姫様はこんな適当な性格ではありますが、力だけは魔族の中でもトップクラスです。こんなところで暴れられてはアルス様もお困りになられるのでは」


 ーーこの子可愛い顔してさらっとリリスの暴言を!


 ルルは表情一つ変えずに俺に伝えてきた。それにこの子も旦那様からしれっと名前呼びに変えている。


 俺もリリスの力はある程度はわかっているはずだ。幾度となくリリスの放つ炎の魔法には苦しめられてきた。それに今はソロの状態だ。


 さすがにこの町にいる全員を助けながらというわけにはいかないだろう。


「そこでどうでしょう?ここは本当にカップルになられてみては。お国を作りになられるのであれば姫様の力は魔族内でも絶大な力を誇ります。それに今の姫様ならカップルになれるのであればどんな条件でも呑んでくれるかと思います」


 ーーそんな簡単に呑むのか!?


 まさかカップルVS国でカップルに軍配が上がるとは思いもしなかった。しかし俺も気になることが一つある。


 確かあいつは…。


「あいつは勘当されたんだろ?地位なんてもうないはずだろう?」


 俺はリリスから決められた結婚が嫌で歯向かったら家を出されたと聞いていた。もうリリスはただの一人の魔族なんじゃ、、、ずっとそう思っていた。


 俺の言葉に対しルルは首を二、三度横に振った。


「姫様はこう見えて仲間思いのお優しい方なのです。魔族の中でも指示してるものは多いです。お声がけさえすれば仲間になってくれる魔族はたくさんいらっしゃいます」


 ーーへぇ〜。


 俺はいつまでも髪をいじりながらもじもじとしているリリスに目を向けた。


 それと。


 ーーこの子たち。絶対面倒なことが嫌だから俺に全部任せたんだろ…


 ルルは表情一つ変えやしないがララは俺と目線が合うとヒョイっと目線をあっちの方向へと向けた。


 ただ良いことを聞いたかもしれない。条件さえ呑んでくれさえすれば力だけで支配しようとしていた考えを変えられる。


 この手を使わない手はない。


 それに今の状況はこの町の人たちを実質人質に取られていることに変わりない。


 ーー仕方ない。やるか!


 俺一人で町の人たちが救えるんだ。やってやるさカップルでもなんでも。


 俺は重い腰を上げ未だに恥ずかしがるリリスの元へと向かった。そんな俺を見てリリスも何か覚悟したのか目を見開いたまま微動だにしなくなってしまった。


「リリス。…あの、、、なんだ、、その、『条件付き』でいいのならカップルになっても…いい」


 ーー恥ずかし〜〜〜!、、、


 俺は緊張しながらも愛の告白じみたことをリリスに伝えた。


 それを聞いたリリスはすごく嬉しかったのかパァっとした笑顔になり俺に勢いよく飛び込んできた。


「本当か!?、、、本当に私とカップルでいいんだな!?」


「条件付きだぞ!条件呑めなきゃカップルはなしだ」


「呑む!、呑む、全部呑むーーーっ!!これでカップル成立ねっ!、、、ねぇねぇ、見てルル!、ララ!私もこれでカップルの仲間入りよ!」


「おめでとうございます。姫様」


 はしゃぎ回るリリスに棒読みのようなセリフを吐くルルだった。


 

 




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