98話
しばらく歩くと他の街同様、高い壁が見えて来た。
「あれは……内壁だよな? じゃあ、ここはどこかの街の自然区なんだな」
「そのようだな……。どうして光神の里と繋がっているのかは分からないが……」
ロディと竹富が壁を指差し話している。リリは手を離したくはなかったが、段々と恥ずかしさが増した事もあり
「ちょっと、木の上から様子を見るわ」
と、ロディの手を離して木の上に登った。
(も……もう限界よぉ……。人前で手を繋いで歩くなんて……)
一番上から内壁の方を見る。少し霧がかかったような街が見えた。
(うん……。私のやってたゲームだと、あの町並みはハルシャギク……)
くすんだオレンジ色の屋根。淡い黄色の壁。各家には暖炉があり煙突がある町並み。
(どうしてハルシャギクと光神の里が繋がっているのよ……? 光神の里まで徒歩1週間……)
地図を頭に浮かべる。
(ハルシャギクから見て、ヒメジオン……ハルジオン……ニワゼキショウのライン上と考えても良いんだけど……。ゲームの中だもんなぁ……。てか、光神の里がどこにあるとか、そんなのどうでも良いんだってばっ‼ とにかく人質の救出が最優先なのっ‼)
リリは木から飛び降りる。街の様子を伝える。
「ハルシャギク……で間違いないわね。とりあえず人質が居るかどうか探るのよね?」
「うん。内壁の門が開かなかったとしても、忍び込むだけの事だしね」
サラもハルシャギクの街だと言うのだから間違いはなさそうだった。リリの提案に竹富が頷く。
「里道? どうかした?」
リリは俯いて考え込んでいる里道に声を掛けた。
「え? あ……。転移装置があるのに、どうして洞窟があるのか気になってな」
「それは、人質がまだ要石を身に付けてないからだろう? 里道の弟は、まだ要石をもらってもない年齢でからで……ん? と、言う事は……」
「人質はハルシャギクに居る。もしくは一度はハルシャギクに来た……だな?」
里道と竹富の会話にリリは深く頷いた。
「私は、人質はハルシャギクに居ると思う。要石がなければ転移装置を使えないなら、ハルシャギクに来てから危険な外界を歩いてハゼランに向かうなんてしないんじゃない? チェリー山脈を越えるなんて無謀な事もしないだろうし」
里道は内壁の方を見詰めた。サラが
そっと寄り添う。
「絶対に助ける……」
「必ず会わせてあげるわ」
2人の絆がありありと見えるようだった。