96話
5人は、しっかりと食事を取った。洞窟から出た先、何があるか分からないのだ。チラリと見えてるのは森らしき一面の緑。
「里道。何か気になる匂いはある?」
「緑の匂いは濃いのだが、水分が多い匂いなんだ」
(水分……。湿地でもあるのかなぁ……)
リリはチラチラと洞窟の先に目をやる。木の雰囲気も、今まで見て来たのとは違って見えた。
「若干だけど、気温が低い気がしない?」
「気温……? あ、そう言えば微妙に冷えるわね?」
サラに言われてリリが気が付いた。洞窟の中を歩いて来たから体が冷えてしまっていたのもあって分かり難かったが、確かに冷えを感じた。
「もしかしてだけど、私達が歩いてたのってチェリー山脈の下……とか?」
「チェリー山脈……かぁ……。確かに、チェリー山脈を越えようとしたら1週間程度歩いたのも頷けるな」
サラの言葉にロディが顎に手をやりながら答えた。
(チェリー山脈……ってハルシャギクやハゼランへ向かう為に越えなきゃなんないデカい山脈だっけ……。あの大きさの山脈なら徒歩1週間ってのも頷けるけど……。でも、私達は光神の里の地下から歩いたのよ……?何で、光神の里みたく隔離された所から実際のフィールドに……)
光神の里へは転移装置を使わなければならなかった。その場所から実際のフィールドに繋がったら転移装置の意味はなくなる。
(ここがチェリー山脈の下じゃなかったら、光神の里ってこのゲームのフィールドの半分位の大きさになっちゃわない……? そんなに大きく感じなかったけど……)
「リリ。考えて分かる事と分からない事があるんだぞ?」
眉間にシワを寄せて悩むリリに竹富が声を掛けた。
「あ……うん。そうだね。この先がどんな所だとしても行って見なきゃ分かんないよね」
ゲームの基本。行ってみなきゃ地図は更新されない。
(分かってるけどぉ……。このゲーム、私がやってたのは地図あったけど、今のはないのよね……)
地図がないから現在地が分からなかった。アチコチ行っていたサラの記憶とリオの記憶から、リリが独自にメモっただけの地図しかない。
「とりあえず、飯が終わったら人が居そうな場所に向かおう。誰か居たら場所も分かるし、誰も居なくてもサラが見覚えがある所があったら教えて」
「分かったわ。任せて」
リリの言葉にサラはニッコリと笑って頷いた。
(サラが行った事のない場所じゃない事を祈ろう……)