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90話


「さて……と。どうやってあの世に送ってやろうか……」

「ヒッ‼ ご……誤解だ……。あれは……捨てたとかじゃなく……」


 振り返った竹富の憎悪しかない表情を見て、崎野はガクガクと震え出した。


「誤解も何も……俺の妹に手を出したのは事実だろう……? それすら誤解だって言うのか? 妹の勘違い……とか言いたいのか? それとも、妹から誘われた……とでも?」


 竹富の短刀が崎野の喉に触れる。ツゥーと血が流れる。


「あ……謝るっ‼ 謝るからっ‼」


 短刀を突き付けられていては動けない崎野は涙を流しながら叫んだ。


「謝って済むのか? 妹は、もう戻らないのだぞ? 水鏡ですら治せなかったのをキサマの謝罪で治るとでも言うのか?」


 ググッと崎野の喉が鳴った。


「さぁ、覚悟を決めろ。キサマに生きてる価値はない……」


 竹富は、崎野の喉を横一線に切り裂いた。血飛沫が竹富にもかかるが、お構い無しに今度は振りかぶって崎野の頬に傷を作った。


「あ……う……」

「逃げたいなら逃げろ……」


 ヨロヨロと立ち上がった崎野のふくらはぎにクナイを投げ付けた。


「うぎゃあァァァっ‼」


 崎野は地面を転がった。痛みに震える手でクナイを引き抜くと足を引きずりながら、歩いて行く。


(竹富……。どんな時でも冷静で表情を変える事が少なかった竹富が……泣いてる……)


 一筋の涙も見せてはいないが、リリには竹富が泣いているようにしか見えなかった。


 大切な妹を傷付けた崎野。そして、その崎野が従う里長。


(どんな思いで……悪代官面さとおさに従ってたの……? どんな思いで……)


 光神の里では里長は絶対的な存在だ。逆らえる者など居なかった。竹富も里道も、どれだけの苦しい思いをして来たのかと思うと涙が出た。


「そろそろ意識が朦朧として来たか? ……これは妹の分だ」


 竹富はヨロヨロと歩いている崎野の背中にクナイを投げた。


「グホゥ……」


 恐らく心臓のある辺りに深々とクナイは刺さった。


「これは……弟を人質にとられ苦しんだ里道の分だ」


 投げたクナイが先に刺さったクナイの近くに刺さる。崎野の口から、おびただしい血液が吐き出された。


「竹富……」


 リリの後ろで里道が小さく呟く。


「そして、これはキサマの不埒な言動で苦しんだリリの分だ」


 再び投げられたクナイが首の後ろに深々と突き刺さる。崎野の体は何度かピクピクと痙攣をした後、ピクリとも動かなくなった。










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