9話
「疲れたか? まぁ、こんな状態で移動する事などないからな……。仕方ない。降りて休息を取るとしよう。里道、リリが 休息したいと言っている」
竹富が声を掛けると、里道は頷いて木を降りた。
竹富も続いて降りる。
里道は近くを見廻り
「魔物はおらぬようだ」
と報告してくれた。
(魔物……。今モンスターが出たら 私ヤバくない……? 戦えんのかなぁ……。さっきレオと模擬戦はしてたけど、私がここにいて良いキャラじゃないかもって思ってしまった今の状態で戦闘なんて出来る……?)
休憩したいと言い出したのは自分なのだが、よくよく考えるとここにも小型ではあるがモンスターが出たはず。
(頼むから出ないでよね……。竹富と里道は強そうだけど、私は一般人なんだからね?)
そしてふと気付く。
(光神の里ってどこにあるんだろ? まさか外界……? だとしたら、私後どれだけ竹富にオンブされて過ごすのよぉ……)
初対面のイケメン忍者におぶわれて、長時間木の上をヒョイヒョイと移動しているなんて精神が持たない。
ガサッ
何かが移動し木の枝が揺れ音をたてる度にビクついてしまう。
(自然区で畑とか耕してるオジサンとかいたよなぁ……。ウサギ型モンスターとかなら一般人でも狩れるとかで食料にしてたけど、実際食べて不味かったらどうしよう……)
どこにいてもお腹は減る。
竹富と里道に、ドングリに似た木の実と、竹筒に入ったほんのり甘い水をもらってようやく一息ついた。
(普通、ゲーム開始時には王様からお金もらったり、誰かからおにぎりとかパンとかもらうのに、何で私はドングリ食べてんのよぉ……。しかも 地図もないしさ。この先、私は どうしたら良いわけ? 模擬戦の後、実家に帰れ〜 みたいな状態なんて、ゲームとして大丈夫なの? 私のやる事は何なの……? 何をやる人……? 何をすればゲームクリアな訳……?)
膝を抱え泣きたい気分でいると、竹富が
「どうした?」
と声を掛けてくれた。
「竹富……。私ってさ……何をしてた人……? どんな感じで生きてた……? ちゃんと生きてた……?」
普段強がって生きていたのに、なぜか弱音を吐いてしまった事に気付く。
(良いのよ……。どうせゲームの中の人達なんだから何を言ったって恥ずかしくなんてない……)