81 話
竹富と里道が情報収集をしてくれたが、誰に訊いても遺跡の情報はなかった。
「東側にあるのは草原と小さな森が点々とあるだけだそうだ」
「俺が聞いたのもそんな感じだった。ロディの言うニワゼキショウの遺跡の情報を知っている人が居たのに、地元の遺跡を知らないって言うのは……な」
リリは街の中央にある噴水の縁に腰掛け悩み始めた。
(やっぱりおかしくなってる……。もしかして、リオが言ってた『もう1人のリリ』が関係してる……とか? 何だろ……。考えろ、私。いくつものパターンがあるんだ……。その中から、1番この状況に合うのが正解に近いはず……)
眉間のシワが深くなる。誰もリリに声を掛けられない位の真面目な表情。
(私がやってたゲームを1とする。リオが居たのが2。1は完成されたゲーム。リオが居た2は雑な所が多い……。もしかして試作品っ⁉ 最初考えたのがあってた? リオからリスティリアに変更したのも販売用として最適なヒロインにした……。じゃあ、リオの言ってた『もう1人のリリ』は試作品の試作品……? あれ? リオはゲームを進めてたはずなのに、ロディ達は私を知らなかった。って事は、ここはリオの居たゲームの中じゃない……。もしかして、試作品の試作品の中なんじゃ……。原因は分からないけど、試作品と試作品の試作品と完成品が……混ざった……?)
悩んで固まるリリの前に、瓶入りのオレンジもどきのジュースが差し出された。
「リリ、これでも飲んでちょっと一息入れろ」
「え? あ、ありがとう」
顔を上げるとロディが居た。キョロキョロと見回すが竹富達の姿はなかった。
「ねぇ、みんなは?」
「リリが考え込んでたから、先に宿屋に行ってるって」
よくよく見ると、空の一部は夕焼け色に染まっていた。
「結構な時間、悩んでたんだなぁ……。悪い事したな……」
「良いじゃん。仲間なんだし」
「うん」
瓶入りジュースを一口飲む。
「夕飯は、それぞれ好きにしようってさ。リリは何が食いたい?」
「ん……。ロディの作った魚肉団子が食べたい」
「お? あれマジで気に入ってくれたのか」
見た目、キツめなのに笑うと優しく見えてドキリとしてしまう。
(良いんだ……。最後はサヨナラしなきゃならないんだったら、いっぱい色んなロディを覚えておきたい……。笑った顔も真面目な顔も、全部全部……)
リリとロディは、街の中の広い公園に向かった。