78話
「まさか覗きをするとは……な」
「人など来ないだろうと油断した俺達も悪かったが」
竹富と里道の前で正座させられて、コンコンと説教されているロディは、俯きながらもチラチラとリリとサラを見ていた。
「リリの裸を見たいなら見たいってズバッと言えば良いのに」
あっけらかんと言うサラに、竹富と里道が目が点になり、ロディは呆然としていた。
「そんな顔しなくても良いじゃない。確かに、リリには許嫁が居るけど結婚している訳じゃないでしょ? しかも、その許嫁をリリは嫌ってる。なら、何か問題でもあるの?」
「いや……確かにそうではあるが……」
「それと……覗きを混同するのは……」
サラが持論をブッ放すと竹富と里道は口ごもる。
「ロディ。あんたは、どうなのよ? リリが許嫁と一緒になるのを許せるの?」
「……そ……それは……」
しどろもどろになるロディを見て、リリは複雑な気持ちになった。
(私が……ロディを好きだと言ったら……どうなるの? それでなくても、この世界は変わって行ってるのに……)
ロディは、膝の上に置いていた拳を握り締めて俯いていた。
「ゴメン、リリ。あの……さ。2人で話したいんだけど……良いか?」
しょぼくれた顔でロディは訊ねた。リリは、少し迷ったが頷いた。
2人は野宿から少し離れた所で並んで座る。見上げると満天の星空が広がっていた。
「その……覗きとか卑怯な事してゴメン……」
「あ……うん」
そして続く沈黙。
「俺……さ。リリを見てて……その……」
顔を赤らめながらボソボソと話している様子は、ゲームで知っていた自信満々で傍若無人なロディではなかった。
出会った頃のロディとも違っていた。
「あ……あのさ……。その……ロディは……私を……その……」
自分から『私を好きなの?』と訊く事も出来ないリリもボソボソと話す。
(何で……? 私、ロディみたいな俺様タイプの男は苦手だったのに……)
ロディは思いっきり息を吸い込んだ。
「俺さ、リリの事が好きだ。ハチャメチャだったりするけど、仲間思いで一生懸命で、一緒に居ると俺も頑張らなきゃって思うんだ。あの崎野ってヤツに言ってたろ? 『許嫁を名乗りたかったら、私に勝ってからにしろって何度も言わせるんじゃない』って。あれ聞いてから、俺さ、もっともっと強くなりたいって真剣に思ったんだ。俺、まだリリに勝てるとは思ってない。けど、リリを守れる位、強くなりたいんだ」