76話
リリと里道は、待っていた3人の所へ戻り、温泉のある場所に近い平らな場所で野宿の準備をした。
「温泉って天然のお風呂って思えば良いのね?」
サラが何度かチャレンジして会得したパエリアを作りながら話す。リリは、先程もいで来たフルーツの皮を剥きながら頷く。
「そうそう。温度も丁度良い位だし、良い所を見付けたわ〜」
「熱かったら氷の塊を浮かべてあげるわよ」
「一気に冷まさないでよ?」
「やぁ〜ね〜。それ位、分かってるわよ〜。で、竹富とロディはどこに行ったの?」
サラは、野宿の準備を始める前に、リリから野菜と玉子を渡されて、ロディと竹富が温泉の向こう側に行った理由を訊ねた。
「温泉の上に源泉……温泉より熱い場所ね。そこで蒸し野菜と温泉玉子を作って来てくれるように言ったのよ」
「蒸し野菜は分かるけど、温泉玉子って……何?」
「源泉を使って半熟玉子のようなのを作るのよ」
半熟玉子と聞いて、サラの目が輝く。
「私、半熟玉子好きよ~。トロットロで美味しいわよね」
サラもだが、個々に好きな物があるのが分かって来た。嫌いとまではいかなくても、苦手な食材があるのも面白かった。
リリは、毎回料理の効果を記録していたのもあって、料理レシピと効果のコンプ率は90%にもなった。
竹富や里道も保存食が大半たったのが、料理を覚え上達して行った。全く料理が出来なかったロディも料理の楽しさに目覚めたようで、リリの所持していた肉焼き器で肉を焼くのがリフレッシュになると言っていた。
「リリ。温泉への道、整備出来たぞ」
「里道、ありがとう。何なら、先に一風呂浴びて来たら?」
「そうだな……。そうしようか」
里道は、少し考えて温泉へと戻って行った。浄化の術で体は綺麗にはなるが、たまにはゆっくりゆったり湯に浸かるのが良いと言うのがあるから、光神の里には温泉があると竹富が言っていた。
「私達も食事を終えたら行きましょ」
「そうだね〜。あ、日本……じゃなくて、光神の里にはさ、湯に入りながら酒を呑むってのもあるのよ。やってみる?」
「え? 良いじゃない〜。やる、やる」
サラはノリノリでパエリアを仕上げた。
(サラ、マジで呑むつもりだ。日本酒っぽいのは光神の里で買ったのがあるけど、足りなかったら……とっておきの山葡萄酒出すか)
リリもガッツリ呑むつもりで、酒の肴になりそうな物を道具袋から取り出して準備を始めた。