75話
ローズ湖の南側をグルリと周り、後少しでヒメウズの街に着くと言う頃には、5人はかなりレベルアップしていた。
「ん? 何だ? 煙……いや、湯気か? 温泉か」
何かを見付けたらしい竹富が、近くにあった高い木に登り確認をする。どうやら、ローズ湖の近くにある山に温泉があるようだった。
「おんせん……?」
「おんせんって何?」
ロディとサラが声を揃えて訊ねる。
「温泉を知らない人類が居るのかぁ〜っ⁉」
リリが絶叫を響かせ、竹富と里道が目を丸くする。口で説明するより現地に行こうと言って、山側に行く事にした。
山の斜面を登って行くと、窪地になっている所に湯が溜まっていた。
「本当、硫黄泉じゃないわね。臭いがしないし。さすが里道の鼻だわ」
「あまり褒められてる気がしないのはなぜ……だ?」
「褒めてるってぇ〜」
リリと里道が先行で温泉の周囲を探る。近くに野宿が出来そうな平らな場所も見付けた。暖かい気候の場所ではあるが、温泉のおかげもあるのだろう。果実の木もあり、実を付けている物もあった。
「食べられるのもある〜。人が立ち入った感じしないし、秘湯って感じだし、ここ良いね」
リリが振り返りながら里道に声を掛けると、里道は硬い表情をして立ち尽くしていた。
「……リリ」
「ん? どうかした?」
一瞬、迷う感じを漂わせたが、里道は意を決したように話し出した。
「俺が……里長に従ってたのは、幼い弟を人質にとられているからなんだ……」
「弟……? 人質……」
「俺だけじゃない。他にも、リスティリア派の動向を探らせられている人間は居る」
「その人達も……人質を?」
里道は悔しそうな顔で頷いた。
(表向きはリスティリア派と見せ掛けてるのは、その方がメリットあるから……よね。あの悪代官面め……)
「弟さんが居る場所は分かってる?」
「え?」
「助けに行くのなら、場所の把握は必要不可欠でしょ?」
里道は口をポカンと開けて固まった。
「リリは、次期里長なのに……か?」
「へ? 何言ってんのよ。次期里長とか、んなモン関係なく、悪い事は悪い事よ? 私が里長になったら、両方に良い顔して私腹を肥やすとかしないから。中立のフリして両方を騙すとか、私が1番嫌いなヤツだから」
「リリ……」
リリにしたら当たり前の事だった。
「で、弟さんは、どこに居るの?」
「恐らくだが、水鏡の間と反対側の地下だと思う」
リリは深く頷いた。
(絶対……助けてやる……)