74話
サラは軽く炙ったデメキンの方が好みらしく、それを肴に呑んでいた。
「この脂と香りが良いわぁ〜」
「俺もだ。炙ると香ばしさがあって良いな」
「里道、分かってんじゃない〜」
なんだかんだ仲良くなったサラと里道は、炙りデメキンを食べながら盛り上がっていた。
「このデメキンって、こんなに大きく育つモンなのか?」
「広い場所だと大きくなるんじゃない?」
「リリ……。適当に言っているだろう?」
「んな事ないってば」
適当な事を言うリリに軽口を叩く竹富。そして、いつの間にかリリの隣が定位置になったロディ。
(この肝が食べらんないのが惜しいな……)
ステータスにあるモンスター図鑑によると、デメキンは肝を食べると幻覚を見るらしい。
(カワハギだって肝が美味いのにぃ〜。ん? 幻覚を見る……。これ、何かに使えない……かな?)
「リリ」
「ん? 何?」
ロディが肉団子のような物をフォークに刺していた。
「骨に付いてたデメキン肉をこそぎ取った団子だ。スープに入れてみたんだ。味見してくれ」
パクっ
「お〜。美味しい〜。ロディ、料理上達したねぇ〜」
「だろ? これ俺の自信作だ。ほら、リリが前に作ってくれた鍋……とか言うのにも合うんじゃね?」
「うん、良いね。今度、また鍋作るし入れよう」
リリの作った事がある色んな料理をゲーム内で調達出来る素材で作ってみるのが、今のリリ達のブームになっていた。
4人のお気に入りはやはりカレー。料理による効果もあり、数日に一回と言うローテで作っていた。
竹富のカレー。里道のカレー。サラのカレー。ロディのカレー。
効果に差はなかったが、それぞれの個性があったり、その場で調達した肉でも味が変わるのが楽しみになっていた。
(楽しい……。私が大好きなゲームだよ、これ。仲間と楽しく過ごして、ガンガンレベルアップしていくんだ)
いきなり遮断されたリオとの繋がりは気になっていた。
(リオ……どうしてるかな……?)
〘どうした、リリ〙
〘さっきまで元気だったのに~〙
『パノール。ステルフ。リオの事が気になって……さ』
モゾモゾと綿毛布に包まりながら、パノールとステルフを撫でる。
〘リオは居るよ〜。大丈夫〙
『そう。ステルフが言うなら大丈夫ね』
〘何かあれば教えよう。今は、体を休める事を優先するが良い〙
『そうするね。おやすみ。パノール。ステルフ』
パチパチと焚き火の癒し音を聞きながら、リリは眠りについた。