71話
翌朝、宿屋の受付前でリリ、ロディ、サラは苦虫を噛み潰した……では済まない顔をしていた。
「私は、レオに着いてまいります」
「それは、無理だと何度も言ったではありませんか。大人しくロディ達と城に戻ってください」
「なぜですの? 私はレオと離れているのは、もう嫌ですわ。」
このようなやり取りが小一時間続いていた。ウンザリしていたのは、リリ達3人だけでなく、宿屋の店主も何度もリリ達をチラ見していた。
「あのさ……。いい加減にしてくれない? 私には、このワガママ令嬢を連れて行かなきゃなんない理由がないの。それとも、外界をロディ1人の護衛で行かせる?」
リリの言葉にロディがブンブンと首を横に振る。あんなドラゴンが居る外界をロディ1人でなんて無理にも程がある。ヘッポコな城の兵なんて、百人居ても敵わないだろう。
「ロディ1人でとは言っていない。リリ達も……」
「い・やっ‼ 断固お断りっ‼ 金貨100枚もらっても嫌っ‼」
「じゃあ、200枚……」
「1000枚もらっても嫌っ‼ お金の問題じゃないっ!!」
今度は、リリとレオの言い争いが始まった。
「どうし……」
「どうしてもこうしてもじゃないっ‼ そもそも、私が何で護衛しなきゃなんないのっ⁉ こんなストレスの元凶とハルジオンまで戻る? 有り得ないからっ‼ そんな義理はないわっ‼」
(もう、レオは私のヒーローじゃない……。私の好きなレオは、もう居ない……。私がゲームに来ちゃったのが原因かも知れないけど……)
リリは、そう言うと宿の外に向かって歩き出した。ロディとサラも続いた。追いすがるようにレオが声を掛ける。
「リリっ‼ あの約束は……」
「そんなモンなしよっ‼ なしっ‼」
リオ……元のリリとレオのした約束。リオと記憶を共有した時に、リリに書き足されたレオとの約束……。
【もっともっとこの世界を知る為に世界中を旅がしたい。この世界を良くする為にも、もっと世界を知らなければならない。その時は、リリも一緒に行こう。里長となる前の自由な時に】
(レオが……変わってなかった私の知っていたレオとなら旅がしたかった……。元の世界に戻るのを後にしても良かった……。でも……今のレオとは一緒に居たくない)
レオとリスティリアを宿に残し、リリ達は内壁の門へと向かった。例のビリッはなく、門の前で待っていた竹富と里道を連れ自然区内へ入った。