69話
「リリ、聞いてんのか?」
「え? あ、何だっけ?」
「どうかしたの? 何かボーっとしてるけど、大丈夫?」
「あ、うん。大丈夫」
宿屋を出て、街の食堂で食事をしながら3人で旅に出る打ち合わせをしていた。ロディと旅に出る話をしたらサラも一緒に行くと言い出したのだ。
「私も、もっと強くなりたいのよ。世界は広いんだし、色んな魔法を覚えたい。だから、一緒に行くわ」
リリもロディもチート級魔法使いの存在は心強かったから、異論はなかった。
問題があるとしたら、レオとリスティリアだった。ロディが、なぜリスティリアのお守りをしなければならなかったのか分からなかったのと同じく、レオがリスティリアを城に連れ帰るのに対し
「お……れ……じゃなくて、私は兵長として兵団を率いて、ヤブガラシの街に向かうのだから、姫を連れ帰るのはリリ達に任せたい」
と言って拒否をしたのだ。
その時のリスティリアの発狂ぶりは筆舌に尽くしがたく、リリ達は暴れまくるリスティリアを兵舎に放置して、猛ダッシュで退散した。
(レオが……あんな風にリスティリアに冷たく言うなんて……。そりゃ、リスティリアとイチャイチャされるのを見るのは嫌だけど……)
レオの優しさは自己犠牲が過ぎるだろうと責めたくなる位だった。自ら困難へと突き進んで行ってしまう位の主人公気質だった……はず。
(パーティメンバーだけでなく、リスティリアにも優しかったのに……。スマートにエスコートをして、まさに姫を護る騎士……って感じだったのに……)
元々のストーリーだったのか、自分がリオと入れ替わった所為なのか、レオは変わってしまった。
(初めて会った時のレオは優しかったのに……)
初めてこの世界に来た時のレオと今のレオが違い過ぎて、ショックが大きかった。
「元気ないわね? 本当、どうしたの?」
「ん? ああ……。これから、どこに向かうのが良いかなって思って」
「レオはヤブガラシの方に向かうらしいからな。別方向に行くか?」
ハンバーグに似た料理をパクつきながら話す。ロディはビールみたいなのを呑み、リリとサラはイチゴに似た果物で作った果実酒。酒豪らしいサラは、水かのようにグビグビと呑んでいた。
「じゃあ……ヒメウズの方に行く?サラは出会った時、ヒメウズに行く予定だったでしょ?」
ヒメウズの街はヤブガラシとは反対側になる。レオに会いたくないなら正反対に行くのが良いとリリは思った。