66話
(みんな、寝た……よね)
RPGお約束の男女同室の部屋。真夜中にムクリと起き出したリリは、部屋の中を見回し、ロディとサラが起きない事を確認した後、そっと宿屋を抜け出した。
〘リリ。どこへ行くつもりだ?〙
『光神の里。リオと話したいのよ』
〘竹富と里道に訊かれたら、何て言うつもりなのぉ〜?〙
『……適当に誤魔化す……のは無理があるかなぁ……?〙
リリは、宿屋を出ると全力で内壁にある門へと向かう。門は閉じている時間だが、リリや竹富達は内壁の壁程度なら飛び越えられる。
スタスタと
「リリ。どこに行くつもりだ?」
(やっぱり……見付かった……。分かってたけどぉ……)
声のした方をゆっくりと振り返ると腕を組んだ竹富が立っていた。里道は、少し離れた場所で困った顔をしていた。
「えっとぉ……。散歩……かな」
「こんな夜中に? コソコソと?」
笑って誤魔化そうとしたが、竹富の眉間の皺が深くなる。堅物の竹富には通じないらしい。
(どうしよう……。ここがゲームの世界だって話して通じる……? 無理……よねぇ? だって、竹富達はここで生きてるんだもんなぁ……。そこを、いきなり『作り物の世界です』って言われて『はい。そうですか』なんて言うなんて思わないよぉ……。私だって、ここがゲームの世界だって思った時、パニクったもん)
学校の先生に叱られているような気分になる。どう言い訳しても逃れられない気がする。
(私、先生苦手……。言い返せない……)
「リリ。ちゃんとこっちを見なさい」
(わ〜ん。ごめんなさい〜。竹富先生ぇ〜)
リリは話せないと思う気持ちと、リオと話したい気持ちが交錯して黙ってしまった。
「話せないのか? 話したくないのか?」
「……話せ……ない」
ピクッと竹富のこめかみが引くつく。
(怒って……らっしゃる……)
「リリ。話せない……のは、全部……か?」
「どこまで話せるか分からないのよ……」
竹富は、ジッとリリを見詰めて、ふかぁ〜〜〜〜〜〜〜い溜め息を吐いた。
「リリ。それは、我々を信用してない……と言う事か?」
「それはっ‼ 絶対にないっ‼ 私は、竹富も里道を信用してるっ‼ 誰よりも信用してるっ‼」
竹富と里道の顔が輝いた。
(へ?)
「そうか。信用してくれてるか……。すまぬ。リリは、我々を信用していないのかと思っていた」
「竹富……」
あまりにも秘密にし過ぎていたかと反省をした。
(けど、ゴメン……。話せる部分だけでも話せたら良いんだけど……)