65話
「ロディ、どうしたのよ?」
リリは自分よりかなり背の高いロディを見上げる。体調でも悪くなったかと思うが、顔色も悪くなく、ただ黙ってリリを見ていた。
「俺、何でリスティリアと居たんだっけ?」
「へ?」
ロディの言葉の意味が分からなかった。
(どう言う事……? ゲームったって、誰が何をするって理由あるでしょ……? このゲームには、それが無かった……? それってゲームとして成り立つの……?)
今までリリが感じて来た違和感。それを上回る違和感。ゲームとして成り立たないのではないかと思う。
「レオに頼まれたんじゃなかったの?」
「あ……うん。そうなんどけど、俺が何でレオに頼まれたのか分かんねぇんだよな。そもそも、俺はレオと接点ないぞ?」
「はぁっ⁉ ちょ……ちょっと待って。レオとは友達だったんじゃないの? それで、レオが外界に行くからリスティリアのお守りさせられてたんじゃないの?」
一瞬、ロディが記憶喪失にでもなったかと思った。
(いやいや……。私みたいに転移したならまだしも、元々ゲームの中に居たロディが記憶喪失ってなる? しかも、何かあった訳じゃないよ?)
「う〜ん……。全く分かんねぇ」
(もしかして、私がやってたゲームには存在しなかった崎野と接触した……から?)
振り返って崎野の居た方を見るが、既に崎野は居なくなっていた。リリの殺気にビビって転移装置を使って、光神の里に戻ったんだろう。
(けど……竹富や里道と接触しても、ロディの記憶喪失みたいのはなかった……。じゃあ……何で……?)
どれだけ考えても分からないと言う状態が、また訪れた。何度も何度も経験した【どう考えても分からない】と言う行き詰まったループのような感じ。
(本当……このゲームの世界が分からない……。出て来るキャラは知っているのが居るのに、ストーリーや設定が違い過ぎる……。何で……? もしかして、ここって私がやってたファンタジックフラワーフィールドじゃない……? 試作段階とかのゲームの中……とか?)
竹富や里道には相談出来ない。ここで、この世界がゲームの世界だと知っているのは、リオだけ。
「まぁ、何か変な感じはするけど問題はないだろ。行こうぜ、リリ」
「あ、うん。新しい武器と防具揃えなきゃね。気に入るのあると良いね。なかったら、武器は鍛冶屋で造ってもらっても良いし」
「そうだな」
リリは、心に刺さった小さな棘が気になって仕方なかった。