62話
ニワゼキショウの自然区に入り、新しい武器の使い勝手を試してみる。
ブンッ‼ ブンッ‼
前に使っていた物より刃が薄い所為だろう。風切り音が鋭い。グリップもしっくり手に馴染む。
(これ……最終決戦前に手に入るぐらいに良い奴だと言えるんじゃ……)
ヒラリ
落ちて来た葉に向かってケーキサーバーを振る。触れただけで、葉はスッパリと2つに切り裂かれ落ちた。
(前に使ってたのから、何段階グレードアップしたのよってくらいに良い武器だわ……)
その時、少し離れた所から声を掛けられる。前に、声を掛ける前に抜刀されたから警戒しているのだろう。
「リリ」
リリが振り返るとロディが笑って立っていた。
「ん? あ、ロディ」
「ちょっと良いか? サラは?」
「サラなら、薬草と毒消しを買いに行ったわ」
リリは、ケーキサーバーを鞘にしまい、ロディに近付く。少し歩いた先にある切り株に腰掛ける。ロディも、その隣にある切り株に座った。
「体、どうなんだ? 違和感とかないのか?」
「え? それを心配して来てくれたの?」
「まぁ、それもあるが……な」
ロディは、空を眺めるように上を向いた。鋭さのある黒い瞳は、何を見ているのか分からないくらいに遠くを見ていた。
(ロディ……?)
「俺さ、リスティリアをレオに渡して、リリと旅がしたいんだ」
「は?」
「なんだよ? 何かおかしいか?」
ゲームの中じゃ、輪を乱す位の自己中っぷりを発揮して、その度にレオに叱責されていたロディと今のロディでは差異があり過ぎた。
(ズレてるズレてるって思ってたけど、もしかしてモンスターの配置とか、キャラの性格とかもズレてる……? それとも、設定を間違えてる……? 何だろ……この違和感……。子供の描く御都合主義の落書きみたいな……)
「リリ?」
「あ……。てか、レオには会えたの? この街に居るって事だったんでしょ?」
「会ったぜ。リリが気が付く前にな」
「私、聞いてないけど……。まぁ、良いわ」
もう、これでワガママなリスティリアと一緒に居なくて良いかと思うとホッとする。竹富に薬草湯を作ってもらわなくても良いし、好きな物を食べて、狩りをして……。
「で、返事は?」
「え? 何だっけ?」
「あのなっ‼」
ロディがガックリと肩を落とす。リリにしてみれば、それだけリスティリアの与えるストレスが半端なかったのは分かるが、あまりにもロディの扱いが酷いと言わざるをえない。