61話
数日後、動けるようになったリリはサラと鍛冶屋へ向かった。
「リリ。疲れたら言ってよ?」
「もう大丈夫だってば」
鍛冶屋は、リリ達が居た宿屋とは真逆の位置にある。それなりに距離があるから、サラは何度も声を掛けていた。
「そう言えば、サラ」
「何?」
「私が気が付いた日から、毎日どこに行ってたの?」
サラは心配だからと夜は一緒の部屋に居たが、昼間はどこかに行っていた。
「ふふふ。鍛冶屋に行けば分かるわよ」
サラは、そう言って妖艶に笑った。
(よくよく考えたら、主人公リスティリアより、サラが主人公の方がウケたんじゃね?)
銀髪ミニスカスタイル抜群の美女なんて主人公にうってつけ。性格は今はサバサバ系だが、それもウケるんじゃないかとリリは思う。
「ほら、あそこの鍛冶屋よ」
サラが指差した先には、煉瓦造りで大きな煙突のある建物があった。
「おじさぁ〜ん。頼んでてた奴、出来てる?」
「おぅ。ミニスカの姉ちゃん、出来てるぜ」
筋肉隆々の2mはありそうな大男が、店のカウンターからヌッと顔を出した。歳は、40歳少し過ぎた処だろうか?
「こっちの姉ちゃんの武器だな?」
「どうも。ドラゴンの鱗から加工した……とか?」
「おぅ。あの鱗、やたらめったら固くてな。ミニスカの姉ちゃんの術じゃなかったら、武器になんなかったぜ?」
リリは、隣に立ってニコニコしているサラを見る。
(まさか、サラが出掛けてたのって……これ造る為……)
ゴトン
鍛冶屋の店主がカウンターに置いたのは、恐ろしい程に輝くケーキサーバー。リリが手を出しても、拒絶反応はなかった。
(いつも駄目ならビリッてなるのに……。つまり、この武器はオッケーって事ね……)
持ち上げると驚く程に軽い。刃を見て曲がりがないかを確認する。
(凄い……)
「グリップ部分は、ドラゴンの皮を使ってあるぜ」
(握りやすい……)
軽く振ってみる。
「気に入ったか?忍者の姉ちゃん」
「最高よ。良いわ、これ」
「そうか。あ、そんでな余った鱗は……」
「あげるわ。サラが居なきゃ加工出来ないだろうけど、売れば資金になるんじゃない?」
店主は目を丸くする。かなりの高値で売れる物をくれてやると言うのだから。
「良いのか?」
「こんだけの良い品を造ってくれたんだし、そのお礼だと思って」
「そうか。ありがたくいただくよ」
リリは店主と固く握手をして店を後にした。