6話
恨む相手がどこの誰かも分からないが、恨まずにはいられない状況なのは確かだった。
(しかも、こんな脇役決定みたいな格好で推しのレオの前にいるなんて……)
更には、自分がかなりドン引きされる様な事を言っていた事を思い出すと自ら穴を掘って埋まりたい気分になって来ていた。
(最悪だよぉ……。こんなエロ忍者みたいなダサい格好でレオの前にいてタンコブ作ってるとか何の罰ゲームなのよぉ……。私が何したってのよぉ……)
凹みまくり。まさに そんな感じの所に、竹富が近付いて右手の掌を上に向ける。
その掌に柔らかな薄い黄色の光が現れ、それをリリの後頭部に近付けた。その瞬間ズキズキと不平を訴えていた痛みは消えた。
「あ……痛いの治った……。ありがと、竹富さん」
心の中では 呼び捨てにして悪態をつきまくっていたが、怪我を治してもらったからと一応『さん』付けをすると竹富は 目を丸くした。
「竹富……さん……? リリ、お主は 次期里長だぞ……? 我々に『さん』などと付けなくて……いや、すまぬ。記憶がないのであったな。とにかく我々は 呼び捨てでよい。分かったか?」
「う……うん……」
(初対面の人を呼び捨てとか嫌なんだよね……。けど『リリ』は呼び捨てで呼んでたんだろうな……。ん〜。『次期里長』って やっぱ 偉いんだよね……? 面倒臭そうだな……)
痛みが治まり、ふとレオを見た。
散々怒鳴り散らしていた為に、レオは苦笑いを浮かべていた。
(あぁ……。推しの前だってのに私って 可愛く見せらんないんだよな……。一生 彼なんて出来なさそう……)
口こそ悪いが人付き合いは苦手も苦手。初対面の人がいたら、借りて来た猫どころか招き猫のように固まってしまう。
友達はいるが、まだ年齢=恋人いない歴を更新中。
(レオみたいなイケメンで優しくて思いやりがあって……。人の為に頑張れて 人の為に怒ったり涙を流せる人が恋人だったらなぁ……)
友達からは『ゲームの中の人に恋しても虚しいだけなんだから現実を見なよ?』と散々 言われた。
(分かってる……。でも利用されて嘘つかれて傷付けられるのは、もう嫌なんだよ……。私は私でありたい……。私を……まんまの私を好きになってくれる人が居ないならゲームの中のレオを好きでいる。……レオはリスティリアと結ばれるけどさ……。はぁ……辛い……。てか、何でゲームの記憶はあんの?)
記憶のある部分が更に不安感を高めていった。