59話
(ヤバいけど……やるしかないのよっ‼)
その時、サラの放った火球が連続してドラゴンの肩口に命中し、その部分が赤くなったのが見えた。
(コイツの鱗の固さって……)
リリは、ロープとしても使える腕に巻かれた帯状の布を解き、ドラゴンの角に巻き付け、自分の体と繋いだ。
「サラっ‼ コイツの顔面……眉間辺に集中して火球をブチ込んでっ‼ なんなら、もっと強力なのを使ってくれて良いっ‼」
「バカを言うなっ‼ そんな事をしたらお前が巻き込まれるんだぞっ‼」
サラが返事をする前にロディが叫んだ。その額には汗が吹き出していて、剣を持つ手も疲れから小さく震えていた。
(これ以上時間かけてたら、こっちがヤラれんだよっ‼)
そう思った時、サラが妖艶に微笑んだ。
「分かったわっ‼ とっておきをブチかましてやるからっ‼」
「サラッ⁉」
ロディが目を見開いてサラを見た。その時、既にサラは複数の魔法陣を展開していた。
(大丈夫。ゲームじゃ、味方は巻き込まれない……はずっ‼)
リリは、そう思ったもののクソゲーだと確定したこのゲームじゃ信用出来ないと思い、身を小さくしてドラゴンの角の陰に隠れるようにした。
(頼むから巻き込まないでよね……。私がウルトラ上手に焼けちゃったらシャレになんないんだから)
次々と火球がドラゴンの顔面に命中する。固い鱗に覆われていても熱さは感じるのであろう。首を振りながらサラへと駆け出すドラゴンだが、それを見越してサラは杖の上に立ち、ドラゴンより上に浮かんで居た。
ガァァァァっ‼
「んじゃ、とっておきをプレゼントよっ‼」
サラの頭上にあるのは大きな大きな火球。
(ウハァ……。またド派手な)
リリは、ドラゴンの眉間の鱗が真っ赤になっているのを確認する。まるで、製鉄所の炉の中のような色をしている。
ドゥーっ‼
ドラゴンの眉間に命中した巨大な火球の風圧は凄まじかった。いくら味方を巻き込まないとは言え、少しの熱さと風圧とドラゴンが悶え苦しむ動きで、角を持っていた手が離れそうになる。
(離して……やんない……んだよっ‼)
ヨロヨロと歩き出したのを確認すると、繋いでいた布を持ちドラゴンの顔面に足を着く。
ジュッ
ブーツの底から変な音と焼ける臭いがした。
(ヤバ……。さっさとしないと足の裏が焦げ焦げになるわね)
リリはケーキサーバーをドラゴンの眉間に突き立てた。今度は、ザックリと肉に食い込んで行き、よろめいたドラゴンは断末魔の叫びを上げ倒れた。リリを跳ね飛ばして……