55話
サラは、リリを見た後、馬型モンスターに乗ったリスティリアと引き綱を引いているロディを見た。そして、リリの耳元に口を寄せた。
「えっと……間違ってたらゴメンね? もしかして、そのパーティで外界に行くつもり……?」
(あぁ……。メッチャ良い匂いするぅ……。じゃなくてっ‼)
「え……あ……うん……まぁ、そんなトコ」
竹富と里道も居るが、性格が違っているサラに、どこまで話して良いものかと思いリリは歯切れ悪く答えた。
「どこまで行くつもりなの?」
「ニワゼキショウの街に」
「ニワゼキショウっ⁉ ここから徒歩だと5日は掛かるわよ? それを、このパーティで?」
(言わないでぇ……。私だって行きたい訳じゃないのよぉ……。そもそも、ハルジオンの街で仲間になるはずのガロとアエルスと会えなかったのよ? それなのに、自然区の森に入れたって事は、このまま進めって事でしょ? で、今、目の前で開門されてるのよ。行くしかないのよぉ……)
驚いて口を大きく開けているサラの後ろを、キャラバンの隊長が睨みつけながら獣車で通り過ぎて行く。
「ねぇ、私を雇わない? 役に立つわよ? そうね……。ニワゼキショウの街まで無事に行けたら金貨10枚って言うのでどう?」
サラはニッコリと笑いながら言った。
平民の1年分が、凡そ金貨1枚。つまり、ニワゼキショウまで無事送り届けたら平民の10年分を報酬に寄越せ……と言う訳だ。
「さっきのキャラバンの護衛は、どこまで行って、報酬は金貨何枚だったの?」
「あら? 聞こえてたの? 地獄耳?」
(イヤぁ……。スンゲーデカい声で話してましたよ、サラの姐さん)
「ヒメジオンの街までよ。金貨6枚って言ったのに、あの隊長出発間際に4枚とか、ふざけた事を言うから」
「はぁ……」
ヒメジオンの街は、ハルジオンの街から徒歩で3日。つまり、サラは一日の報酬は金貨2枚って報酬で動いてるって訳だ。高いとは思うが、命の値段としては安いのではなかろうか。
「で、どうする?」
(確かに高い……よ? けど、マジな話、竹富と里道が戦闘に参加してくれなかったらどうする? ロディと2人で外界のモンスターを討伐出来る……? モンスターが一体とは限らない。足手まとい(リスティリア)連れてるのに複数体と戦闘になったら……)
「分かった。ニワゼキショウまで金貨10枚ね」
リリは命と金を天秤に掛け、命を選ぶのが得策と思いサラの申し出を了承した。