第4章 外界ってこんなのだっけ? 54話
外界への門が開かれるのは、一日の内に三回。朝、昼、夕だけ。しかも、夕方は、外に出る事は出来ない。中に入る人だけに限られる。夜の外界は危険だからと出られないのだ。
「昼前に着けなかったら、もう一日、野宿する事になるんだけど?」
寝起きの悪いリスティリアにリリが嫌味マシマシで言わなかったら、外界に出るのは一日遅れていた。
「着替え……」
「着替え持って来てる訳?」
「顔を洗う水を……」
「川に行くか、バケツに汲んだ水よ?」
「髪をとかして……」
「肩口辺で、バッサリ切ってあげようか?」
何を言っても思い通りにならない事にイラつき、リスティリアはリリを睨みつけた。
ロディが視線を向けるとウルウルして助けを求めたが、ロディにも同じように言われ、仕方なく自分で支度をした。
(私的には、諦めて城に帰ってくれても良いんだけどなぁ〜。その方が楽だし。けど、そうなると外界に行く理由がなくなるし、リオの要石を探しに行けない……。足手まといの姫を連れて行かなきゃならないのだけがネックだな)
外界への門の前で開門を待っていたのは、リリ達の他には行商の獣車。
(キャラバン……かな? ゲーム内にも、どこから来たんだって感じのキャラバンが居たっけ?)
手練れの護衛を雇わねば越えられないはずの外界に、何処からともなく現れるキャラバン。道具屋や武器や防具も売ってくれたりする便利な存在。
そのキャラバンの荷台から大きな声が聞こえた。
「は? 今更、何を言ってる訳? あ、そ。なら、解雇で良いわ。勝手にすれば? はい、もらったお金は返すわね。じゃあ、お達者で〜。ウォームベアに踏み潰されちまえ」
(え? 何?)
振り返ったリリの目の前に獣車から飛び降りて来た美女が立っていた。
腰まであるキラキラ輝くストレートの銀髪に鮮やかな青空色の瞳は、くっきりとした二重瞼で美人度をアゲアゲにしていた。誰もが一目で『魔法使い』と言うであろう装束(ただし、へそ出し&ミニスカ)で、先の曲がった杖を持っている。捲れ上がったスカートの裾をパンパンと払いながらリリに声を掛けて来た。
「ゴメンね。ぶつからなかった?」
「あ……うん、大丈夫」
(あぁ……。サラだぁ……。相変わらず綺麗……。でも、性格変わってね?)
ゲーム内では大人しく、わりと無口なキャラだったサラ=パティルがキャラバンの隊長らしきオヤジに暴言を吐いていたのだ。