53話
(んふっ。やっぱ、魚は刺し身よねっ。醤油もどき買っておいて良かった)
パクパクとデメキンの刺し身を口にするリリを見て、竹富も里道もロディも目を丸くした。モンスターを生で食べるなど、考えられないだろう。
「無理に食べなくて良いからね?」
食べる前に言ったからか、リリがパクついてるのを黙って見ていた3人だったが、あまりにも美味そうに食べるリリを見て恐る恐る小さ目のを一切れ食べてみた。
「なんと……」
「おお……」
「へぇ〜」
デメキンのトロは、とろける旨さで、気が付けば完食していた。残りは、焚き火で炙りにして大きな葉っぱで包み道具袋にしまった。
✤✤✤
リスティリアが起きる前に、内蔵や骨を処分しておいた。繊細なお姫様には、内蔵がドンと置かれているのは刺激が強過ぎるだろう。
ロディは、朝が弱いリスティリアを叩き起こし、魔肉と野菜を挟んだサンドイッチとリンゴ水を与えた。
リリは、野宿の後始末をしながら、ヒクヒクと引きつりながら魔肉入りサンドイッチを食べるリスティリアを見て吹き出すのを我慢していた。
「竹富、里道。2人の道具袋で足りない物はない? あるなら、門の前の道具屋で買い足すわ」
竹富の作ってくれた薬草湯と久し振りに口にした刺し身のおかげで機嫌と体調が回復したリリが訊ねる。
「うむ。ロディ殿は外界の東に向かうと言っていたのだな? ならば、毒消しは多目に準備しておいて間違いはないだろうな」
「だろうな。東側は、毒を持つ魔物が多くいると言うからな」
竹富も里道も意見は一致していた。リリもやっていたゲームでは、東に向かうと毒持ちが多くいたと記憶していたので、道具屋では毒消しが要ると思っていた。
「そうね。毒消しは多目に買っておこう。魚型モンスター(デメキン)の尻尾は高く売れそうだし」
リスティリアが馬型モンスターに乗ってくれているおかげで、何とか昼前には外界への門前に着き、既に馴染となった道具屋の店主は、デメキンの尻尾を高く買ってくれた。大きめの鱗は防具の素材になるらしく、防具屋の店主が高く買ってくれた。
(さてと……。これで外界に行ける。レオは、東のニワゼキショウの街に居るはず……。居なかったら、リスティリアを城に戻したら駄目……かしらね……? 駄目……なんだろうなぁ……)
ある程度は自由に動けるのは分かったが、どうやっても人が作ったゲームの中。規制される事も多く、先が不安になるリリだった。