51話
しばらく木の上で目を閉じていると、幾分気持ちが落ち着いた。
(この先の事なんて分からない……。
リスティリアと上手くやっていけなくても、私はリオとの約束を果たす目的だけは見失っちゃいけないんだ……。ゴメンね、リオ。私、頑張るから……)
大きく息を吸い込み、リリはリスティリア達と距離を取った場所で野宿をする準備を始めた。
竹富と里道に交互に見張りをお願いして、リリは少し眠った。精神的な疲労は安眠の邪魔をした。何度も何度もテディベアに踏み潰され、内蔵が潰れる感覚を感じ、冷や汗をかいて目が覚めた。
(気持ち……悪い……。胃がムカムカする……)
「どうした、リリ」
見張りをしていた竹富が声を掛けた。真夜中の森では周囲に灯りはなく、焚き火の小さな炎と無数の星々と空に浮かぶ薄黄色と薄ピンクの2つの月が幻想的な雰囲気をかもし出していた。
「うん。ちょっと……お水飲みたいと思って……」
「そうか。……顔色が悪いぞ?薬草湯を飲むか?」
(あぁ……。そう言えば、薬草があったっけ……? 胃がムカムカしてんなら、お水より温かい飲み物の方が良いかも……)
「うん。そうする。じゃあ、お願い出来る? 私、顔を洗って来るから」
「分かった」
竹富は頷いて道具袋から鍋と竹筒水筒と薬草入れを取り出して、薬草湯の準備を始めた。
リリはモンスター避けを出て、近くの小川に向かった。幅70cm位の小川はキラキラと水面を輝かせていた。
(山もないのに、何で小川があるんだろなぁ……。本当、このゲームって適当過ぎ)
いつものように怒る気にもならない自分に気付いて、少し笑った。冷たい水の中に手を入れ掬い上げて顔を洗った。
(気持ち良いな。屋敷の露天風呂には敵わないけど)
パキッ
木の枝が折れる音がした。
「うわっ‼ 待てっ‼ 俺だ、俺っ‼」
音がした瞬間、リリはケーキサーバーを抜き、戦闘体制を取った。切りかかろうとした相手はロディだった。
「何だ、ロディか」
リリはケーキサーバーを鞘にしまうとフッと息を吐いた。
「リリって抜刀早いよな。早過ぎて見えなかったぞ」
「ノロクサやってたら命なくなるじゃない」
リリはロディに背を向けて、また水を手に掬った。
(リスティリアと居るだけで、胃薬要るよな……。竹富にお願いして、水筒にたくさん薬草湯入れておいてもらおう……)
疲れた様子のリリを見て、ロディは溜め息を吐いた。