50話
何とか内壁から外界との間にある自然区の森へと入り、乗り馴れない馬型モンスターに乗っているリスティリアを気遣い、適度に休息と取りながら進んだ。
途中、食料になりそうな小型のモンスターを狩ったリリを見て、超絶嫌な顔をして背けたリスティリアに対して、またリリの怒りがわいた。
「お姫様。あなたが、普段食している物も、誰かが血を浴びているのですよ? 食べ物は、切り身で生きて動いている訳ではありません」
体に浴びた血液を浄化魔法で消しながらリリは嫌味たっぷりで言った。
その後、内壁の門へ辿り着くまでにかなりの時間を無駄にした挙げ句、休憩の回数が複数に及んだ所為で森で夜を過ごす事になった。
野宿の準備をして、捕らえたモンスターを焼いてリスティリアに差し出すと、この世の終わりのような顔をされた。
「嫌なら食されなくてもよろしいですよ。あ〜。城のお抱えシェフと旅をされてはいかがです? そうそう、それと言っておきますが、私はメイド仕事はしませんよ? お着替えも身支度も全て御自分でなさってくださいね? ロディにさせると言うなら、どうぞお好きになさってください。まぁ、野宿では、お風呂もありませんけどね」
あからさまに嫌な顔をしたリスティリアと呆れ顔のロディの周りにモンスター避けの結界を張り、リリは近くの大きな木の上に登り膝を抱えた。
(……もうヤダ……。見掛けが良いだけのガキの御守りするなんて、ストレスで胃に穴開きそう……)
そこに、スッと竹富と里道が姿を現した。
「リリ、疲れたであろう。ここは、我々が見ているから、少し体を休めるが良い」
竹富が、思いっきりリリを労ると里道も深く頷いた。
「それが良い。我々の任務は、反リスティリア派の監視と報告だったが、当のリスティリア姫があのような人物とは、な……」
里道が眉をひそめ、結界の中で不機嫌そうにしているリスティリアを見ながら言う。
「ありがとう、竹富、里道。正直さ……反リスティリア派の人の気持ち分かるよね……。第一王女とは言え、あの姫がこの国を治めるなんて無理がある……。民の為にならない……」
現在のリスティリアの政治的手腕は分かっていない。だが、あの性格で国を治められるのかと問われたら、全力でNOと言いたくなるのは仕方がない。
(そんなリスティリアを護る為に行動してんだから、反リスティリア派の人間からしたら、光神の里は敵になんじゃないの?)