5話
「リリ、聞いてるのか?」
竹富は再び声を掛けた。
「リリ。行くぞ?」
ふと顔を上げると、竹富はどう言う身体能力をしてるのかと訊きたくなる様な跳躍を決め(ゲームではありがちだが)17〜18mはあるであろう壁に跳び乗った。
それに続いて里道も跳び上がった。
「ちょっ‼ ちょっと待ってっ‼ 私は そんな芸当出来ないわよっ⁉ てかっ‼ 私の頭が痛いの何とかしなさいよっ‼」
超人的跳躍をした竹富と里道に向かって叫ぶ。
叫ぶリリに向かって呆れたような目を向ける竹富。
「何を言っている。回復術を使えば良いであろう?」
壁のてっぺんから見下ろして言われると馬鹿にされているような気がして腹立たしさにガルガルと唸る。
「んなモン使えないわよっ‼ 使えるんならさっさと使うってぇのっ‼」
里道がフゥと溜め息を吐いた。
「竹富。リリは記憶喪失で術を使えなくなっているのでは?」
「む。そうか」
(こいつらブン殴ってやりたいっ‼ けど、ブン殴ろうとしても絶対に避けられるよねぇ……。こんな高い壁をヒョイと上る奴らだもんな……。あれ? 私 さっきバク宙した……よね? なら壁上り位出来んじゃない? その前に、このタンコブよっ‼ 身体能力は記憶喪失で失ってなくても回復術なんてどうやって使うのよっ‼ 使い方教えろぉ〜っ‼)
ヒラリと音も立てずに竹富が壁から下りて来る。
(てかさ、忍者っぽい装束って思ったけど、こいつらの言う光神ってのは、もしかして忍者の村……?)
ふと自分の姿を見た。くすんだピンクと薄紫の間の様な色合いの忍者っぽい服。
スパッツとタイツの間の様なのを履き、胸元が透けた下着だかインナーの様な物を着ていた。
濃い灰色のストレッチブーツの様な物の履き口は黒いテーピングみたいな物がグルグル巻いてあり、腕にも肘から手首まで同じような物がグルグルと巻かれていた。
(うわぁ……ダサ……。完璧にヒロインの引き立て役って感じよね……。竹富と里道を殴る前に、キャラデザした奴をブン殴りたいっ‼)
鏡がないので顔を見る事は出来ないが、頭のタンコブを撫でた時に髪がショートカットなのと、かなりのふわふわな猫毛なのは分かった。
(これで不細工だったら 一生恨んでやるからなっ‼)
どうやってブン殴れるか分からないが、拳を握り締めて心に誓った。