48話
内壁への門へは徒歩で30分もあれば余裕だった。
リスティリアが居なければ
……。
「ロディ。私、少し疲れましたわ」
長い丈のドレスの裾を少し持ち上げ、ソロソロと歩くリスティリア。歩くのが遅い上に、10分もしない内に疲れたと休憩をするのだ。
(な……何なんだぁ〜〜〜〜〜っ‼ 私はやってたゲームの姫は戦えてたぞっ⁉ 百歩譲って剣とか武器は使えなくても良いっ‼ けどっ‼ この足手まといは何なのよっ⁉ 内壁の門に着く前に、私の血管が全部ブチ切れるってのっ‼)
リリは、ギロリとロディを睨みつけて胸ぐらを掴んだ。そして、ズルズルと引っ張ってリスティリアから距離を取った。
「あのさ……私、もう帰って良い……?」
「リリ、落ち着けって。首、締まってっから……」
「これがっ‼ 落ち着いていられる状況だとっ‼ アンタはマジで思ってる訳っ⁉ あのさっ‼ 待ち合わせの噴水が見えてんのよっ⁉ あれから何分経ったと思ってる訳っ⁉ こんな調子でっ‼ 外界に出たらっ‼ 即全滅よっ‼ 私は、あんなアホの子の為にっ‼ 命を掛ける義理はないっ!!」
言いたい事を言って、投げるようにロディの胸ぐらから手を離すとロディは涙目で咳き込んだ。
「ゴホッゴホッ。リリの言う事も分かるけど仕方ない……」
「勝手に仕方なくなってれば? 悪いけど、私は付き合ってらんない。アンタはレオから頼まれた。でも、私は頼まれてすらいないの」
リリが背を向けるとロディが左腕を掴んだ。
「待ってくれってっ‼」
「は・な・せっ‼ 離さないなら……」
リリが空いている右手でケーキサーバーを抜こうとした時、ビリッと電気が走った。
(何……? ここで武器を抜くなって事? 冗談じゃないわよっ‼ 私に、あんなのに付き合って、仲良くモンスターに食われて死ねってか? ふざけんなっ‼)
その時、フワッとした光りが現れた。
「キュルー」
「キュキュー」
2つの毛玉が可愛く声を上げる。
『パノール……。ステルフ……』
〘落ち着け。リリ〙
『けど……けど……』
〘怒ったら可愛い顔が台無しだよぉ〜〙
『……可愛くなくったって良いわよ……』
美人だったり、可愛かったりでチヤホヤされて、他人は自分に従う物と言わんばかりの女が大嫌いだった。ワガママ放題で、何をしても許されると思っている女が大嫌いだった。
そして、そんな女をチヤホヤしたり、あわよくばで持ち上げたり褒めちぎってる男が大嫌いだった。
リリは怒りで涙が溢れそうになるのを必死で堪えた。