45話
「ふ〜ん」
パノールとステルフが姿を消すと、それまで黙って見ていたロディはマジマジとリリを見た。
「何?」
「光神の人間って、マジで不思議だなって思ってな」
その言い方が蔑むようなモノだったらブン殴ってやろうかと思ったが、心底羨ましいと言う感じに聞こえた。
(リオが主人公だったらってのは、こう言うの使えたりするのからも想像出来るのよね……。まぁ、ゲームによっては主人公より個性的なキャラも居るけどさ)
「他の人達から見たら不思議でも、当人達からしたら当たり前ってのは、よくある事じゃない?」
ゲームによく出て来る魔法使いは魔法を使える事を疑問に思ったりしない。リスティリアは自分を姫である事を疑問に思ったりしていないだろう。周りから無条件で大切にされて居る事も、どれだけ周囲の人間を振り回しているかと言う事も無自覚だろう。
「ん? まぁ、言われてみりゃそうだな」
ロディは、そう言うと組んだ腕を後ろに回し、木にもたれかかり目を閉じた。
(コイツ、寝る気かぁ〜? 私は、やらなきゃなんない事あるってのに)
リリは、溜め息を吐くと道具袋から紙と羽根ペンのような物を引っ張り出し、サラサラと手紙を書き出す。
(えっと……。リスティリアと外界に行かなきゃなんない事と交代要員を至急向かわせて欲しい事……。他に、何かあったっけ?)
不備があったとしても、御都合主義のゲーム内。パノールに渡そうとしても渡せないだろうと思いながら書き進める。
(こんなモンかな?)
なぜか、ゲーム内の文字がスラスラ書けるのも御都合主義故。書けなくても良い場面はありそうだが、読めないのは困るかも知れないが、大抵は分かりやすく武器屋には剣が描いてある看板があるから大丈夫である。
(言葉が通じりゃ何とでもなんのよね)
「パノール」
手紙を書き終えたリリが声を掛けるとパノールはフワッと現れて、差し出した手紙をどこかに収納すると消えた。
(消えたって事はオッケーって事ね)
紙と羽根ペンをしまうと、呑気に昼寝をしているロディを見る。
(ここに一晩放置したらどうなるのかな? ゲームだし、風邪を引くとかなさそうだけど)
明日、ロディ達と旅に出るなら、その準備をしなければならない。
(食材と調味料の補充は……門の前の道具屋で良いよね。いくら、何でも入れちゃえ袋でも古い食材は嫌だし)
リリは、居眠りをしているロディの鼻をつまんで起こし、ロディが怒鳴る前に壁に登って逃げた。