44話
行きたくなくても行かなきゃならないのがゲームキャラの悲しき宿命。
(監督覚えてろよぉ……。生レオに会えたのを差し引いても、現世に戻ったら、3発はブン殴ってやるからなっ⁉)
「で、いつ出発するの?」
「明日の昼前には出たいんだよな。で、外界に行くのは明後日の朝だな」
リリ達が任務の交代をするのは、まだ先の話。明日、城から離れると言うのは無理がある。しかし、行かない選択肢はない。
(仕方ない……んだよな……)
ハァっと何度目かの溜め息を吐くとリリは
「竹富、里道」
と呼び掛けた。
さっきはロディと顔を合わせなかった竹富と里道は、サッとどこからともなく姿を現し、リリの前に跪き頭を下げる。
「明日、外界へ行く為に森を抜けます。里道は、引き続き任務を遂行して、交代の者が着いたら追い掛けて来て。竹富は私に随行。里への連絡は、私がするわ。良い?」
「「承知」」
(さてと……次は……)
「パノール。ステルフ」
リリが呼び掛けると目の前がフワッと光り、コロンとした丸くて青い毛玉と黒い毛玉が現れた。共に銀色の羽が生えておりパタパタと飛んでいる。
(リオには従ってたって事だけど……。私が〘リリ〙じゃないと知っても従うかな……? いきなり噛み付いたり、炎を噴いたりしないでよ?)
青毛玉が金色の瞳をリリに向けた。
「キュルー」
と可愛げな声で鳴くと脳内に声が響く。
〘そなた……リリではないな?〙
『分かるのね、パノール。あなた達の『リリ』は今は、ここには居ないのよ。今は、私がリリなの』
今度は黒毛玉が銀色の瞳を向け
「キュルー」
と鳴く。
〘ふ〜ん。リリの気配は消えてないね〜。ただ、遠い……って感じだね〜。なのに、キミからもリリを感じる〜。不思議だね〜。〙
『ステルフ、事情は追々説明するわ。今は、私をリリだと思って従ってくれない?』
この青毛玉と黒毛玉は、リオがハゼランの街の近くにある洞窟で見付けたと言っていた。傷付いていたのを手当たら、そのままついて来たと言う。正体は分からないが、姿を消したりテレポートのような事が出来る不思議な生き物だとリオは言っていた。
『話は聞いてくれてたよね? 今から、里長に手紙を書くからパノールは届けてくれない?』
〘良かろう〙
パノールはパタパタと銀色の羽を動かした。
〘ボクは、どうすれば良いの〜?〙
『ステルフは、私と一緒に来て』
〘分かったぁ〜〙
その会話が聞こえないロディは、ただボーッと見ていた。