32話
一回目の戦闘では何ともなかったのに、なぜか今回は罪悪感に似た物が湧き上がった。
(もしかして……リオは、戦闘を嫌ってた……?)
主人公ばりのステータスの持ち主のリオ。
リリの想像ではあるが、リオは主人公だったかも知れないのに、戦闘を嫌悪していたかも知れない。
リリと記憶を共有した事で、リオの戦闘への嫌悪感まで流れこんだのかも知れないとリリは思った。
「リリっ‼ まだ終わってませんよっ‼」
里道が声を掛けると同時にテディベアがモフモフの腕を振り回すのが見えた。
「おわっ‼」
(ヤバいっての。私、集中しろっ‼)
モフモフだと思ってた手には鋭い爪があったのか、頬に軽い痛みが走った。
直撃は避けられたが、避けたはずみでケーキサーバーの片方がテディベアの尻尾の少し上に刺さったままになった。
「チッ‼」
(大切な売り物の毛皮に、これ以上ダメージ与えたくないから……)
リリはケーキサーバーを太ももの鞘にしまうと、飛び上がりながらテディベアの鼻面に蹴りを入れた。
竹富と里道もリリの指示通りに打撃をテディベアに加える。
テディベアの頭上のゲージが赤く点滅し始めた。
「これでっ‼ 終わりっ‼」
リリは再び飛び上がるとテディベアの首筋に肘打ちを喰らわせた。
ポフッ
何とも可愛い音を立ててテディベアは前のめりに倒れた。
(首の骨が折れた音がポフッて……)
今度は油断しないでゲージをチェックする。
(オッケー。意外と時間かかったなぁ……。ゲーム開始してそんな時間経ってないのに、この強さは反則でしょ……。最初っからこんなの出しちゃ駄目。ゲームの初心者ユーザーさんがヤル気なくすんだかんね?)
汗を拭いながら周囲を見回すと、道具屋のおじさんや防具屋のおじさんが木陰から怖々と顔を覗かせていた。
(お店、壊れちゃったんだよなぁ……。この壊れたお店ってどうするんだろ?)
そんな事を考えていると竹富が近寄って来た。
「リリ、回復術を使わないと。血が流れている 」
「え? あ……うん」
現世の癖で手の甲で拭おうとしてしまい、里道が嫌な顔をした。
(はいはい。回復術ね。使えますよ、初歩のだけど)
胸元の要石がホワッと輝き、傷がスゥーと消えた。
重ねて浄化もし、血の汚れを消した。




