30話
一週間ゆっくりと体を休め……なかった。
記憶や術などはリオと共有した事で一応ステータス上は習得となったが、 やっぱり自分の物とする為にリオの部屋の外にある日本庭園で鍛練をしていたのだ 。
真っ直ぐ飛び上がるのも何度かすると体得出来、庭にある松の大木も楽々飛び上がれた。
術は、ステータスを確認しながら何度か試したら使えるようになったのだが、回復術は不得意なのか初期回復しか出来なかった。
仕方なく、行く先々で薬草などの採取をしようと決める。
(よし。こんくらいで良いかな? やっぱ違和感はなくした方が良いもんね。いつ帰れるか分からないんだから……)
半露天風呂に入るたびに、﨑野ののぞきイベントは起きた。
湯桶じゃ物足りなくなり、巨大な氷の塊をぶつけてやったら、さすがに里長からお叱りがあったが、のぞきをした事を訴えると﨑野は小さくなっていた。
ゲーム内でよくある掛け布団に入れないと言うのには困ってしまった。
(真っ裸で寝るのって憧れたけど、いざやれるとなると何だかなぁ……って感じなんだよなぁ〜)
仕方なく風呂敷などを縫いつけて掛布団っぽい物を作った。
浴衣があったので着てみたがイベントなしだとリリの衣装は忍者服に固定らしく、可愛い浴衣を着た途端忍者服に変身すると言う有り得ない状況に壁を殴り飛ばし風呂場の壁に大穴を開けてしまった。
(壁……修復されないのなぁ……。多分、私が無理矢理穴開けたからだよな……。ここで風呂場の壁に穴が開くなんてグラフィック担当は想像してなかっただろうし……)
鍛練後風呂に入るたびに、グラフィックの自動修復の素晴らしさに感心する。
(キャラデザ担当は黒Tバックとエロ忍者服の恨みでぶっ飛ばしたいけど、グラフィック担当には差し入れしたくなるよな。空も綺麗だし)
「では里長。行ってまいります」
リリは深々と頭を下げた。
「うむ。今度は気を付けるのだぞ?」
「はい」
﨑野は
「近付いたら首無し死体にするから」
とリリから脅された事もあり、玄関の引き戸の陰からそっと覗き見をしていた。
(行ってくるね、リオ)
屋敷の奥の地下に視線を向ける。
リオは光里の部屋のパソコンの中で何をし、何を思っているのか。
(パソコンの中……。秘密のフォルダだけは覗くなよぉ……)
そんな事を祈りながら、竹富と里道を引き連れ古びた神社へ向かった。