26話
水鏡の石組みの中から手を引き出し、リオと合わせていた右手を見詰めた。
(リオ……。リオを助ける事が私を助ける事にもなるはず。私、頑張るからね? 待ってて、リオ)
確かに不安はいっぱいある。
自分がリリとなった事で、ゲームクリアがどうなるか分からないのが一番の不安だった。
だが、進むしかないとリリは顔を上げた。
「竹富」
これまでと同じように竹富を呼んだつもりだった。
だが『何か』が違っているのを感じたのか、竹富はビクッと肩を震わせた。
「竹富?」
「あ……はっ‼」
(何だ……? リリがリリじゃない……。いや、リリなのだがリリじゃないような……)
「里長に任務報告をしに戻るわ」
「はっ‼」
真っ直ぐ背を伸ばし歩く姿は、次期里長として相応しいと竹富は思った。
リリは里長に任務報告をした。
リオの記憶ではあったが何の問題もなかったようで、里長は頷き次の任務の交代までの一週間を休息すると言った。
(今の任務は、大半が反リスティリア派の奴等の動向を探る事……。つまり光神の里はリスティリア派。恋敵……リオはレオに対して好意があった訳じゃないけど、私にとっては恋敵の警護や反リスティリア派の諜報活動……かぁ……。何か恋愛物でよくある好きな男の子と親友を応援する悲しき役柄って感じよね……。私って本当、メインヒロインになれないのよね……。ハァ……)
悪代官面の悪役声をウンザリした気分で聞いていた。
(こんな悪代官面してても里長になったんだよね、コイツ。前里長を闇に葬った……とか、事件の匂いしない?)
某小学生探偵ばりの観察をしてみるが、所詮ゲームのキャラデザ。
それっぽい風体にしたのだろうと思い、話が終わるのを待ってさっさと自室に戻る事にした。
リオの記憶によれば、リリは実力を認められ次期里長となってから里長の屋敷に住んでいるとの事。
(リオの記憶のお陰で屋敷内も迷わないし、助かったわ)
日本庭園っぽい庭を見ながら長い廊下を歩き、離れ(東京23区内だと豪邸の部類に入るぐらいの)の、どう見ても襖の前に立つ。
(確かこの離れは、リオにしか解除出来ない術で封印されてるのよね)
リオの記憶が、ガッツリバッチリ抜かりない侵入者対策をしていると教えてくれていた。
(こんな長閑な所で……?)
と思ったのだが、それには重大な理由があった。