25話
〘確定ではないのだけど、ヒメウズの街の東にある遺跡に行く事があったら、そこで私の要石を探してくれない?〙
『要石……? あ……もしかして、これ?』
リリは 左手で胸元の石に触れる。
〘そう。私にはその遺跡までの記憶しかないの。最後の記憶が、その遺跡で要石を失くした事なの。もしかしたら要石を失くした事が、あなたと入れ替わった事に関係してるんじゃないかと思って〙
(この石が入れ替わった事に関係するなら 探さなきゃな……。ただ、ヒメウズの東の遺跡って、かなり後じゃないと行けないはず……)
〘お願いね、リリ〙
『うん。頑張るよ、リオ』
リリがニッコリ笑うとリオも笑った。
『何かあったらここに来るから』
〘ありがとう、リリ〙
そう呟いたリオはスゥーと消えた。
リリは中空をスライドして、リオと共有した事で書き足されたリリのステータスを確認する。
(うわぁ……。リリってチート級のステータスの持ち主だったんだ……。身体能力はレオやロディにも引けは取らないし、術なんてサラやガロより上じゃない……。リオはヒメウズの街の東の遺跡までの記憶しかない……。つまり……)
リオにははっきり言わなかったが、恐らくリリと言うキャラクターはゲームの開発途中で消されたキャラ。
つまりは『ボツキャラ』だった。
(だから私がやってたゲームには居なかったんだ……。これだけのステータスがあれば、ラスボス戦だって楽勝だったと思うのに……。女主人公では売れないと判断して消した……とか? ストーリーを全面改修してまで消したかった理由って何……?)
開発者が当時思った事など分かりっこない。
(もしかして防具屋にリリの新コスがなかったのは、リリがボツキャラだったから……。ゲームが完成する少し前リオ…ううん。リリは何かしらの理由でボツになった……。だからリリの装備は削除された……)
ボツにしたキャラクターの防具屋が売ってる訳がない。
武器もこの先手に入らないかも知れないだろうと思う。
(ステータスはチート級だけど、防具や武器がないのは、この先ヤバいかも……)
このゲームには武器開発や防具開発はない。
(ん〜 。何とかなる……? 悩んでも仕方ないか……。何とかしよう。最悪自分で作る……とか、鍛冶屋にオーダー依頼するとかさ。方法は色々あるさ。グジグジ悩んでないで前を向けっ‼)