23話
〘あなたは、今どこに居るの?〙
水鏡の中の『リリ』が同じ質問を返して来た。
『私は水鏡の間って言う所よ。あなたには分かる……よね?』
〘ええ。そう、水鏡の間に……。どうして、こんな事になったのか分かる……?〙
『全然、全くもって分からないのよ……。私は記憶も曖昧なの。そっちのリリはちゃんと記憶あるの?』
〘ちゃんとあるわ。ねぇ、リリ……って、私もリリなのよね〙
確かに二人で『リリ』と呼び合っていたらややこしい。
〘私の事はリオって呼んで。真名に近い呼び方だから違和感ないし〙
『分かった。仕方ないよね。戻り方が分かるまで、私がリリであなたはリオ……ね』
名前を取られた気にはならないかと気にはなるが、ゲーム内に居る方が呼び方を変える訳にもいかないとリリは納得した。
〘で、リリはどこに居た人……? 元々この四角い箱の中に居た人?〙
『いやいや。私はちゃんと生活してたわよ? バイト行って、ゲームして……。ねぇ、リオが今居る所から何か見えたりしないの?』
〘えっと……バイトって言うのは分からないけど、見える物を伝えるわね。四角い箱の正面には青い布が見えるわ。その近くに白い角のないウサギ型モンスターが動かずに居るわ〙
『青い布……? ウサギ型モンスター……? もしかしたら、今リオが居るのは私の使ってたパソコンの中かも……』
青い布は 青いカーテン。
ウサギ型モンスターが動かないのはウサギの縫いぐるみ。
パソコンの正面にある物が水鏡の中のリオが見ている物。
四角い箱はパソコンか、パソコンに繋いであるモニター。
〘パソコン……? それが、この四角い箱なの?〙
『うん。リオは、私のパソコンの中に居てモニター越しに私の部屋を見てるんだと思う。何で、リオが私のパソコンの中に行って、私がリオの世界に居るのかは分からないけど』
曖昧だった記憶の中ではっきりしていたのは、ここがゲームの中だと言う事。
だからゲームに関係しているパソコンの記憶ははっきりとしていた。
〘モニター……? よく分からないんだけど、戻り方 分からないのよ……ね?〙
『うん。ねぇ、戻り方を探す為にもリオの記憶を私に共有出来ないかな? リオは、パソコンの中から出られないっしょ? 私が、こっちで戻る方法を探すとしても、リオのリリとしての記憶がなくて動き辛いのよ』