21話
扉を開けると、その先は人が二人並んで通れる程度の薄暗い道があった。
壁にはボゥと光る石が嵌め込んである。
(明かり……にしては暗いけど見える程度だし、モンスターがいる気配もないから大丈夫……よね?)
一歩踏み出すと、ひんやりとした空気が体にまとわりつく。
10mも進むと下りの階段があった。
(水鏡って地下にあるんだ……。てか、水鏡って水を使った鏡……って事かなぁ……? 明鏡止水……とか言う感じの名前っぽいけど……)
スタスタ……
スタスタ……
スタスタ……
(ちょっとぉ〜っ‼ この階段どこまであるのっ⁉ 今何m下りたのっ⁉ 帰りはこれ上るんだよねっ⁉ パッと行く使えなかったら、上りって辛いわよっ⁉)
自分と竹富の足音だけが聞こえていると、何とも言えない不気味さに襲われる。
(モンスターは出なくても幽霊とか出そう……。駄目っ‼ 考えちゃ駄目っ‼ 性格が悪い奴等が考えたゲームだったら、幽霊の一匹や二匹 出して来るからっ‼)
「リリ」
「ふぇおぅ 」
突然、竹富に声を掛けられて変な声で返事をしてしまった。
「何を言っている……」
(そんなに呆れた顔しないでよぉ……。私、幽霊とか駄目なんだからぁ……)
「もうすぐ水鏡の間だ。リリは覚えておらぬようだから言っておく。水鏡の間には一人で入るのだ。広間の真ん中に石に囲まれた水鏡がある。そこで水鏡に触れれば良い。分かったか?」
竹富が丁寧に説明してくれる。
(ゲームのキャラらしいよね。説明してくれるのって)
「分かった。てか、水鏡って記憶喪失を治す物……なの?」
「記憶喪失だけではない。術では治せない怪我や病気なども治せる物だ」
(成る程……。何でも治しって奴かぁ……。さすがゲーム。便利アイテムあるのね 。てか、病気や怪我してる人がどうやって、このクソ長い階段下りるのよ……)
感心した後に、なぜか湧く疑問。
(何にでもツッコミ入れたくなる癖も治るかしらね? 後、お風呂入った時シャボン玉したくなるのも……)
ようやく平坦な場所に着いた。
目の前にあったのは、今度は大きな岩の扉。
(これも個人識別で開く……のよね?)
ゲームのパターンとしてそうなのだろうと思い、扉に近付き 手を当てた。
ゴォン……ゴォン……ゴゴゴ……
今度は、大きな音がして岩の扉は開いた。
(さて……どうなるのか……)
大きく息を吸い込み 一歩踏み出した。