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20話


(親じゃなかった……。よ……良かったぁ〜)


 悪代官面が親ではないのはホッとしたが、だからと言って自分が不細工ではないとは限らない。


 ゲーム内の女性キャラは、大抵美人か可愛いと相場は決まっている。


 しかし、もし『リリ』がNPCだとしたら、その中には含まれない。


(不細工は嫌よぉ……。せめて普通でお願いします。てか、私……ってか『リリ』の苗字は光神なんだ……。光神リリ…)


 呟いても現実味はなかった。


(そりゃそうか……。私がしてたゲームには『光神リリ』なんてキャラ出てなかったもんなぁ……。覚えがある訳ないよな。……てか、私の本当の名前を思い出せたりする? それは無理……?)


 少しずつではあるが『リリ』の事は分かって来たが、現実世界の記憶は、まだはっきりとせず部分的にしか思い出せない。


(ここで生きて行く為の事だけ思い出せて来てる……とか……? まさかね。それじゃ、私ここから出らんなくなりそうじゃない。ずっとゲームの中で生きて行くとか有り得ないっしょ……)


 いつか元に戻れる。


 でも、それは生でレオを見られなくなると言う事だ。


(究極の選択……って奴? けど……生でレオを見てたいけど……。リスティリアと結ばれて、ハルジオンの王になるレオを見るのは……嫌だ……)


 ゲームをしていても失恋気分を味わったのに、それを目の前で見るのはさすがに辛い。


(少なくとも、レオがリスティリアと結ばれる前に、ここから戻りたい……)


 そんな事を思いながら歩いていると、大きな木の扉の前に着いた。


「ここが水鏡の間だ。覚えはあるか?」

「ん……。あるような……ないような……」


 ほのかに木の香りがする巨大な扉。


 この先に進めば自分のこれからの生き方が決まる。


 そう思うと柄にもなく胸が苦しくなる気がした。


(ビビるな……私……。何でこんな事になったか分かんないし、どうすれば元の世界に戻れるか分かんないって言う分かんない事だらけだけど、夢じゃないってのは分かってる……。なら進むしかない……。自分の生き方は 自分で決める……。誰かの意思でゲームの中に放り込まれたとしても私は私だ……。その中で自分の生き方をする……。私は誰かの為に生きてる訳じゃない……)


 キッと顔を上げ目の前の木の扉に手を当てた。


 胸元の石がアメジスト色の光を放ち、音もなく重さも感じず扉は開いた。






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