2話
焦りに焦る心とは違って、なぜか綺麗なバク宙を決めレオから少し離れた場所に着地をする。
(え? 私スゲー。バク宙なんて出来たんだ……。じゃなくてっ‼ 何でこんな事になってんのよっ‼ 誰か教えなさいってっ‼)
泣きたくなるような状況にプチパニック……どころではなく打ち上げ花火の十尺玉位のパニックに襲われる。
「お見事です。では、もう一度 行きますよ?」
(いやぁ~っ‼ 来ないでっ‼ ん? 来て欲しいかも♪ 至近距離でレオの顔を拝めるとかラッキーよね? じゃなくてっ‼ 木刀で攻撃されるのなんて嫌よぉ〜っ‼ 降参っ‼ 降参するからっ‼)
どうしても心と体が一致しない。
両手を上げて降参したいのに、なぜか両手の木製武器を構えてしまっている。
そこに先程とは比べものにならない位の衝撃が加えられた。
「どわぁっ‼」
少なくとも若い女の子の叫び声とは思えない声を上げて弾き飛ばされ、後ろにあった大木に強かに頭と背中が打ち付けられた。
(いっ……たぁ……)
そして訪れた暗闇。
「リリ。大丈夫ですか?」
「リリっ‼ おいっ‼ リリっ‼」
「リリ。しっかりしろ」
ゆっくりと意識が戻って来る。
(リリ……? リリって誰……? 私は……あれ? 私は誰だっけ……? ん……? えっとぉ……思い出せない……? 何で……?)
「リリ。聞こえてるのか?」
ゆっくりと目を開けると黒髪に青い瞳の忍者みたいな格好をした若い男と茶髪に金の瞳の忍者みたいな格好の若い男が自分を覗き込んでいた。
「え……。ここ……どこ……?」
さっきまで木刀VS木刀で戦っていたのは覚えていた。
その時は周りを見ている余裕がなかったが、地面に横たわった状態で周りを見ると高い壁と虹色にぼやけた空が見えた。
呟いたセリフに、金髪剣士レオがゆっくり首を横に振った。
「すみません、リリ。普段の貴女なら 避けるか、当たったとしても受け身をとると思って思いっきり……。ここは王城内の修練場ですよ? 分からないんですか……?」
(あ……レオだぁ……。ん? あれ? これ夢じゃないの……? あれ?)
「里道。リリは頭を打ったんだな?」
「ああ。竹富の方からは 木の枝で見難かっただろうが、リリは頭を強かに打った。もしかして……『記憶喪失』とか言う奴だろうか?」
2人の若いイケメン忍者が顔を見合わせて話しているのをボンヤリ聞いていた。