19話
無理矢理座らされた上、竹富に無理矢理頭を押さえ付けられる。
(頭下げろってか?)
自分が不細工かも知れないと言う怒りが収まらないままだが、仕方なく頭を下げる。
(私が頭を下げなきゃゲームが進まないってのは分かるけどっ‼ 尺の都合もあるんだろうけどっ‼ ムカつくっ‼)
「里長。リリ、竹富、里道。只今戻りました」
悪代官……ではなく、里長は仏頂面で頷いた。
「予定より早くはないか?」
(顔に似合って悪人声……。悪代官面でイケボはないか。イケボの無駄遣いは罪だもんね)
竹富は俯きながら更に話す。
「はい。リリが鍛練中に頭を強打しまして記憶を失ってしまい、交代の者達を待たずして戻りました。任務の方は完了しております」
里長はジロリとリリの方を見る。
「ふむ……。そう言う事なら仕方もなかろう。竹富、リリを水鏡の間に」
(水鏡……? 鏡……。それを見たら、私の……『リリ』の顔を見られる……? じゃなくてっ‼ それも大事だけど、記憶の書き足しが出来る? 出来なかったとしても、鏡なんだし顔を見られんのよね?)
記憶も大事だが顔も大事。
そんなリリの思いを知らない竹富は頷いた。
「では、報告は水鏡を使った後に。失礼致します」
(え……? 水鏡ってのを使った後に、またこの悪代官面を見なきゃなんないの? こんな悪代官面を連チャンで見るなんてゴメンなんだけどぉ……)
どうやら、何かしらの任務を受けていたらしいとなれば報告をしなきゃならないのは分かっていてもウンザリする。
「里道。報告を」
(里道は、別の任務あったのか……)
里長の声に里道は頷き、竹富は立ち上がった。
小さな声で
「リリ、行くぞ」
と告げられ、リリは立ち上がった。
竹富にならい一礼をして広間を出て、屋敷の更に奥へと向かう。
「ねぇ、竹富……」
「ん? どうかしたか?」
どうしてもこれだけは訊いておきたいと話を切り出す。
「あの里長って、リ……じゃなくて 私の親……?」
竹富は目を丸くする。
「親の事も忘れておるのか……」
(え……。マジで、アレが親父……なの?)
ハァと竹富は溜め息を吐く。
「里長はリリの親ではない。里長には、この里で一番の実力と信頼を得た者がなり『光神』の姓を名乗る。そなたは『次期里長』であるから『光神』を名乗っているだけで、親は別に居る」