14話
猪もどきでしっかりとお腹を満たしたリリ達は、焚き火の後始末をキッチリとして外界へと繋がる門の所へと向かった。
モンスターと戦えたのだから、もしかしたら木を飛び移って移動出来るのではと思ったリリは、スゥーと息を吸い込み ジャンプをするイメージをしてみた。
ビュン
(うぉっ‼)
真っ直ぐ跳び上がる事は思っていた以上に難しかったが、何とか高い木の上に上がれた。
(ん〜 。真っ直ぐ跳び上がるには体幹を鍛えなきゃならないのかな……? で、次は目標を決めて……飛び移るっ‼)
丈夫そうな木の枝を見付けてはヒョイヒョイと飛び移って移動を始めた。
ただ、怖々なのと手頃な木の枝を見付けるのに手間取り、竹富と里道を待たせる事になってしまっていたが、二人は『リリは記憶喪失』と信じ込んでいるから、モタモタとしていても何も言わずに待っていてくれた。
(ゴメンよぉ……。こんな事やった事ないから、マジわっかんないんだよぉ……。あっちの世界で、こんな事やる機会なんてなかったんだよぉ……)
いつ戻れるか分からないのだから、それなりの技術やスキル等は身に付けておいた方が得策と必死でやってみるしかなかった。
(ここで会得しても、あっちで出来る訳ないだろな……。元々の身体能力が違うし……さ)
何とか外界と自然区を隔てる壁の前へと辿り着いた。
そこにはたくさんの荷馬車があり、小さな市場のようになっていた。
(うん。この感じは変わってないな……。確か、道具屋とか武器屋の荷馬車あったはず……)
キョロキョロと見回し、荷馬車の取り扱い商品に目をやる。
(うん、大丈夫。ゲームだと外界に行く準備するんだし、色々揃ってんだよね。普通なら外界に行く人なんて殆ど居ないんだし、店があるのが変なんだけど、さすがゲームだわ)
道具屋に武器屋に防具屋。ゲームであった荷馬車商店がキッチリと並んでいた。
(ただ、これから光神の里ってトコに行くんだし、買い込みは後回しだな……。どれぐらい滞在するか分かんないし……)
「竹富。さっきの猪もどきの毛皮、先に売って来ても良い?」
リリはそう声を掛けた。
道具等の売り買いをした事がない竹富や里道だと足元を見られると思い、値段交渉は自分がすると決めていたのだ。
(未経験者じゃ安く叩かれるのがオチだもんね。ちょっとでも高く売って良い武器買いたいし、新しい服も欲しいなぁ……)