133話
待ち合わせの公園に行くと20代半ば位の男性がベンチに座っていた。
「あの……加々美さんですか?」
光里が声を掛けるとこちらを向いた顔に息を飲んだ。
(ロ……ディ……)
髪の色が違う。目付きもそんなにキツくない。服装もラフな格好だった。でも、雰囲気はロディだった。
「瀬田さんですか? 加々美です」
声もロディに似ていた。少し低めだけど優しい声。
無言で立ち尽くしている光里に近付き、荷台に積まれているパソコンに目をやって優しい優しい笑顔を見せた。
「やっと……見付かった……。連絡ありがとうございました。……瀬田さん?」
「あ……いえ。あの……良かったらで良いんですけど、このパソコンを探していた事情を訊いても良いですか?」
加々美は頷く。
「重いでしょ? それ。あそこのベンチに置いてからにしましょうか?」
光里は頷くとベンチの近くに自転車を停めて、加々美は荷台からパソコンを下ろしてベンチに置いた。
加々美はパソコンの横に座り、少し間を空けて光里は座った。
「俺、中学生の頃からゲームを作る事に夢中だったんですよね。でも、ゲームを作るのは出来たんですけど、ストーリーを考えるのが下手だったんですよ」
隣に座って話を聞いているとロディと話しているような不思議な気持ちになっていた。
「でね、高校に入ってバイトしてこのパソコンを自分用に買ったんです。将来はゲーム製作者になるぞって意気込んでたんですけど、中々上手く出来なくて……。大学に入って就職活動をする頃……現実を見なきゃって思ってこのパソコンを手放そうって……」
愛おしそうにパソコンに手を置いている。
「そう考えた頃、俺のSNSを見たゲーム制作会社から商品化しないかって話が来たんですよ。ゲーム画面やなんかを見たってね。恥ずかしい話なんだけど、その頃付き合ってた彼女に浮気されたのもあってちょっと荒れてて、ゲーム会社にデータを売って、パソコンも売ってゲームから離れたんです」
恥ずかしそうに俯いて話す加々美の横顔を見詰めた。
(やっぱりロディに似てる……)
「ゲームから離れてしばらくしたら俺のゲームを基礎にしたゲームが販売されて。でも評判がイマイチで……」
「稀に見るクソゲー……でしたっけ?」
光里の言葉に加々美は驚いて顔を上げた。
「もしかして……?」
「はい。そのクソゲーのヘビーユーザーです」
加々美は目を大きく見開いて光里を見た。