125話
「リリ……。コイツの言ってた『偽物』ってのは本当なのか?」
ロディが真剣な顔でリリを見た。竹富達も黙ってリリを見詰めている。
「うん……。私はリリだけどリリじゃないの。私の本当の名前は瀬田光里。日本人なのよ」
ゲームの中のキャラに『日本人』と言っても通じない。それは分かっていた。
「本当のリリは……死んでいるのだな?」
「経緯は分からないが、その……リリとどうして同じ姿をしているんだ?」
リリは、どこからどう話して良いのか分からなかった。隠すつもりはないのだけれど。
けれど、竹富と里道にすれば『リリ』は次期里長のリリ。
「えっと……」
話そうとした時だった。里長に握り潰されたリオの要石の欠片がキラキラと光を放ち始めた。
(え?)
眩しく光っている要石に全員の視線が注がれる。
「リオ……? リオ……」
リリが小さな声でリオに呼び掛けた。
ゆっくりと要石が集まり始め光の中に半透明のリオの姿が現れた。
〘リリ……〙
「リオっ‼」
ずっとずっと長年会えなかった親友に会えたくらいの切なさからリリはリオに駆け寄った。
〘里長の気配がなくなったって思ったら……。私……帰って来られたんだ……〙
「うん。竹富も里道も無事だよ。光神の里の人達は……かなり少なくなったけど……」
手を取り合う二人を見て四人は呆然とした。
「リリが……二人……」
ロディは口を開け固まった。半透明とは言えリリと瓜二つの女の子が目の前にいる。
「「リリ……」」
竹富と里道には、リオが本物のリリだと分かったようだ。
〘竹富、里道……。留守にして申し訳なかったわね〙
リオが竹富と里道を見て微笑む。
「本物さんの声が聞こえる……。じゃあ……リリはどうなるの……?」
サラの瞳がリリを見詰める。サラには竹富や里道のようにリオに思い入れはない。
サラにとっての親友は『リリ』なのだ。
「サラ……」
振り向いたリリの変化にサラは大きく目を見開いた。
「リリ……。体が……」
「え?」
リリが自分の手を見た。リリの体の半分以上が透けていた。
ロディもリリの体の変化に言葉を失った。
(リリが……リリが……)
その時、グラリと地面が揺れた。
「えっ⁉ 地震っ⁉」
リオを除く全員が立てなくなるぐらいの揺れが数秒続いた。
(このゲームに地震なんてあったっけ……?)
リリがゲームの中での天災を思い出そうとした瞬間、城が大きな音を立て崩れ始めた。