122話
「リリの要石を……むしり取った……?」
リオからは『ヒメウズの遺跡で失くした』と聞いていた要石が里長によってむしり取られていた。
「そうだ。この要石と言う物はな、成人になったら里長が儀式で体に埋め込むのだ」
リリ、竹富、里道は胸の要石に手を当てた。
リリ自身には、もちろんその記憶はなかった。リオと共有した記憶にもなかった。
「記憶はなかろう? 要石の儀式の記憶は消しているからな」
「なぜ……記憶を消すの……?」
里長はニヤリと笑ってリリを見た。
「記憶があっても意味はなかろう。要石の使い方が分かっていれば良いだけだからな」
「なぜっ‼ 記憶を消したかって訊いてんのよっ⁉」
里長は怒りで震えるリリを嘲笑った。
「要石は転移装置を使ったり、屋敷の中の扉を開けるだけではない。要石を通じて貴様等の生命力を集めて、この世界を作り変えているのだ」
そう言って里長はあろうことかリリの要石を握り潰した。
里長が手を開くとアメジスト色をした要石の欠片がハラハラと畳の上に落ちた。
(リオの……要石が……)
この世界に戻りたがっていたリオ。この世界がゲームだと知っても自分の生きていた世界だから戻りたいと言っていたリオ。
「生命力を集めて……この世界を作り変えて……この世界の人達を支配して……あんたは……何がしたいんだ……?」
低い竹富の声が響く。握り締めた手が怒りで震えていた。
「ふん。知れた事。世界を支配する。それだけだ。光神の里の里長である儂が世界の王になる。王帝陛下なぞクソ喰らえだ」
当たり前の事を訊くなといわんばかりに里長は竹富の問いを鼻で笑った。
「そんな事の為に……弟や里の皆を苦しめたのか……? ハゼランやハルシャギクの人々を戦わせたのか……?」
里道も怒りがこもった目で里長を睨み付ける。
「世界を支配する為には、そんな些細な事を気にする馬鹿はおるまい」
そう答えた里長にリリはキレた。
今までこんなに怒りに震えた事がないくらいにキレた。
「あんたは……人を人とも思わず……自分の欲望の為に……何百、何千もの人の命を踏みにじったんだ……」
「だからどうした? 儂の造り上げる世界に不必要な物は排除しただけの事だ」
「不必要……? リリも不必要だったって事……?」
リリはケーキサーバーに手をやった。
(コイツは……コイツだけは……私の命に代えても……殺す……)
リリは一気に間合いを詰めた。