121話
階段とは違う光に溢れた部屋。百畳はあるかと思うような巨大な部屋の奥に座っていたのは里長。
「わざわざ殺されに来たか」
厭らしく笑う姿に虫唾が走る。
「誰が殺されるって? 何? 鏡に向かって話してる訳?」
ケーキサーバーに手をやりながらリリは思いっきり嫌味をぶちかます。
「ふん。で、ずっと訊こうと思っていたのだが……お前は誰だ?」
里長が趣味の悪い扇子でリリを指した。
竹富と里道がリリを見詰める。自分達のように里長の記憶にもおかしな処が出たのかと。
「へぇ〜。気付いてたんだ? いつから?」
「お前が初めて光神の里に来た時からだ。お前は光神リリではない」
竹富と里道の目が見開かれた。
「リリ……。リリがリリではないとは……どう言う事なんだ……?」
「俺達だけでなく、紀高もリリ様と呼んでいたのにリリじゃないのか……?」
リリは二人にニッコリと笑う。
「ごめん。私はリリであってリリじゃない。姿はリリのままなんだけど、中身は違うの」
訳が分からない二人に頭を下げた。
「竹富、里道。其奴は、お前達のリリではない。今までの事はなかった事にしてや……」
短気なサラは里長に言葉を遮り初級ではあるが氷魔法を放った。
意外と素早く動いた里長はヒラリと避けた。
「うるさい。クソジジィ」
「クソジジィ……だとっ⁉」
里長の座っていた所には、氷によって一メートルぐらいの穴が開いていた。
「クソジジィにクソジジィって言って何が悪いのよ? そもそも、ここに居るリリがリリじゃなかったとして、あんたのやった事が帳消しになるとでも思ってんの? 私の大事な友達のリリはここに居るリリなのよ。お分かり?」
サラが長い髪をかき上げながら言うと里長がギリギリと睨み付けた。
「ワリィなクソジジィ。俺達はここに居るリリが俺達のリリなんだ。オッサンの言うリリがどんなリリか知んねぇが、俺の惚れたリリはここに居るリリなんだよ」
ロディとサラの言葉にリリは涙が出そうになった。
「ふんっ‼ そんな偽物が良いとはな。本物は、もうこの世には居ないと言うのにな」
里長が邪悪な笑みを浮べながら言い放った。
「リリがこの世には……居ない……?」
「それは……どう言う……」
竹富と里道の声が震えていた。
リリの目が見開かれた。
「本物のリリは既にあの世に居る。殺してヒメウズの遺跡にある井戸に沈めた。要石をむしり取ってな」
里長の手にはアメジスト色の要石があった。