12話
ガツンっ‼
頭蓋骨にケーキサーバーが当たる音が響く。
ゴリゴリと骨が砕ける音とズブズブと何かを切り裂く感覚が手に伝わる。
(これ……肉の感触……? 脳味噌の感触……? キモっ‼)
竹富のクナイが猪もどきの目を貫く。
「グォーっ‼」
猪もどきの断末魔が響き、ドスンっと体が横倒しになった。
ビクビクと何度か痙攣すると猪もどきはピクリとも動かなくなった。
リリがケーキサーバーを頭頂部から引き抜くと、噴水のように血が噴き出た。
(ウゲェ……。臭いはリアルの血とは違うけど、それでもかなりグロくない……? R指定なかったのにな……)
かなりの臭いとベタつきにウンザリした顔をすると、竹富が近付いて来た。
「リリ。《浄化》をするから息を整えろ」
(《浄化》……? あ……もしかして……)
恐らく体やこの場にある血液を消すものだと理解して、深呼吸をし息を整えた。
竹富の手から銀色の光が現れ、猪もどきの周囲に飛び散った血液とリリの全身に付着した血液がサラサラとした光になり消えた。
(はぁ……。やっぱりゲームの中……よね。ご都合主義だわ…… 。綺麗さっぱり消えたわよ、血溜まり……)
「怪我はないな?」
竹富はリリを見ながら訊いた。
「大丈夫。これ解体したら、また血が出たりする?」
「解体……?」
竹富は不思議そうに訊ねた。
「うん、解体。肉にするのと、毛皮剥いで道具屋に売って旅の資金にするの。ゲー……じゃなくて、常識でしょ? もしかして……間違ってる……?」
自分の知ってるゲームとは違うのかとビクビクしながら訊ねると、竹富は少し考えて頷いた。
「そうか。そう言う事か。なぜそんな簡単な事が分からなかったのだろうな?」
その時、自分の視界の右端にチカチカと点滅する物が見えた。
(もしかして……)
右手で自分の目の前の中空をスライドさせるようにするとステータスが現れた。
(やっぱり……。竹富はモンスターの解体とか、それを売るってのは未経験だったんだ……。モンスターの一部は食べられるってのも知らない……。『リリ』のいたゲーム内では、竹富がパーティーとして参加しなかったのかも知れない……。ステータスの殆どが未習得になってる……。私がここに来たから竹富が ゲームキャラとして成長し始めた……って事かも知れないな……)