114話
NPC達の襲撃は絶え間なく続いた。恐らくハルシャギクとハゼランの住民達。
そして……光神の里の住民達が居た。
リリが里長の屋敷で見たお手伝いのおばさん。庭の手入れをしていたおじいさん。田畑で農作業をしていた人達。小さな子供達も居た。
リリとして接した人達。『リリ様』と呼び掛けて笑っていた人達。
(やめてっ‼ もう……やめてっ‼)
所詮は一般人。リリ達にダメージを与える程度の攻撃はなかったが、リリと竹富と里道の精神的なダメージは計り知れなかった。
数時間後、ようやくNPCが居なくなり、リリ達はガックリと膝を付いた。
(こんな……こんなのって……)
ポタポタと涙が落ちる。今までゲームをして来てNPCと戦う事がなかった訳ではない。だが、今のリリには実戦なのだ。
竹富も里道も流れる汗を拭いながら難しい顔をしていた。
(私以上に……光神の里の人達と深く関わってたんだもんね……)
リリはゆっくりと首を横に振った。
(私が落ち込んでどうなるってのよ。しっかりしないとっ‼)
リリは道具袋から料理の材料や鍋を取り出し始めた。
「第二波があるかも知れない。今の内に食事とるわよ。竹富、耐寒とモンスター避けの結界を。里道は全員の浄化をして。ロディはカレー作って。サラは一口カレーパンの準備を」
全員がリリを見た。涙をボロボロ溢しながらもテキパキと指示を出していた。
(泣いてても、やらなきゃなんない事をする……か)
ロディはクックと笑うと道具袋からカレーの材料を取り出して調理を始めた。
(もっと甘えてくれりゃ良いのに。無理か)
自分に好意がない訳ではないとは分かる。許嫁と言っていた崎野は、サラの最上級炎魔法で消し飛んだ。
もう何の障害もなさそうなのに、なぜかリリは踏み出せないでいるのは分かっていた。
(何なんだろうな。やっぱ、次期里長ってのが引っ掛かってるのかなぁ……)
次期里長は恐らく族長のようなものだと理解している。王帝陛下程ではないが、貴族よりは格上だろうと推測出来た。
(俺みたいな剣士じゃあ釣り合い取れねぇのは分かってるけど……。リリは、んな事を気にするか? ん……。どうしたもんだかな)
悩んだところで、リリからの答えが聞ける訳ではない。焦って訊く事もしたくない。
(仕方ねぇ。とりあえずリリの胃袋を掴むか)
その時のロディは気付いてなかった。いつの間にか自分が剣王と呼ばれるレベルに達していた事を……。