112話
その日の夜
「リリ、起きてるか?」
モンスター避けと耐寒結界の外からロディの声が聞こえた。
最近は里道とサラは一緒の結界内で寝るようになったのでリリは一人で横になっていた。
「ロディ? どうかした?」
「入って良いか?」
「うん」
起き上がったリリが答えるとロディは結界内に入って来た。そして、リリの隣に座る。
「リリ。何か隠し事してないか?」
ドキン
(バレて……る訳ないよね? 私が、この世界の人間じゃないって事……)
「別に何もないよ?」
「……本当か? 本当に本当か?」
「うん。決戦前で緊張してるくらいかな?」
真っすぐに見詰められると、口にしてしまいそうになる。『消えたくない』と。
(言ったって……仕方ない……。消えるか……リオと入れ替わるのだから……。もし、ロディの気持ちを受け入れてリオと入れ替わったらどうなる? リオにはリオの好きな人が居たら、私の所為でリオとロディの間に亀裂が入る……。リオが不誠実な人間って思われたら困る……)
ロディがそっとリリの手を握った。
「もっと頼っても良いんだぞ? 俺、出会った頃よりも成長しただろ?」
「うん。強くなったし、人との関わり方も上手くなったよね」
「『自信があるのは良いど、自信過剰になって足元を掬われたら命に関わるんだよっ‼』って、何度もリリに叱られたよな」
出会った頃もだが、ゲームをしていた頃のロディは本当に好きになれなかった。俺様キャラが好きな人にはウケたのだろうが、王子様に憧れがあったリリには無理だった。
「だって、誰にも死んで欲しくなかったし……ね」
ゲームの中でしか知らなくても、ロディと言うキャラを見て来た時間があった。会った時は少し警戒したけど、いつの間にか仲間として……一人の男性として見ていた。
「俺は死なない。リリを遺して死ぬとか絶対しない。だから……さ」
ロディの顔が近付く。
(え? ちょっ‼)
リリの腰が引けそうになる。気持ちは……受け入れてたい。ロディの気持ちを。だが……自分が居なくなった後の事を思うと……。
ロディの唇がオデコに触れた。
「今は、こんだけで我慢しておく」
照れてそっぽを向いたロディの顔は真っ赤だった。
「バ……バカ……」
リリは膝にオデコを付けて顔を隠した。
(絶対……絶対死なせないから……)
ゲームだから大丈夫なんて言う問題じゃない。
(ゲームであっても……絶対死なせないんだから)