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111話


 リリ達はハルシャギクの街を出て、更に北へと向かった。


 ハゼランはハルシャギクの北に徒歩で二日。


「これ……雪……」


 ハルシャギクを出て一日目の朝。ヒラヒラと雪が舞って来た。現世リアルと同じような結晶の雪が手の平に落ちた。


(え?)


 リリは目を見開いた。


(あれ? 気の……所為……?)


 一瞬、自分の手が透けて見えたのだ。


(消える……の……? 私……)


 まだ里長を討った訳じゃない。ゲームのエンディングを迎えた訳じゃない。それなのに消えてしまったらリオはどうなるのかと思うと胸がギュッと締め付けられた。


(私……消えるんだ……。元の世界に戻れる……? ただ消えるだけだったら……私はどうすれば良い……? この世界に来たのが転生だったら、元の世界の私は死んでる……。元の世界に戻っても、このゲームは出来ない……。二度とロディには会えない……)


 隣を歩いているロディを見上げる。リリの視線に気付き、ロディがリリを見た。


「どうかしたのか?」

「ロディは……雪見た事あるの?」


 『私が居なくなったら悲しい?』と訊ねてしまいそうになり誤魔化した。


「ああ。ハゼランがまだ混乱するずっと前な。リリは初めてか?」

「うん。綺麗だよね」

「寒くね?」


 他愛のない話をしているだけでも思い出になる。


(最後まで笑っていよう。ロディの笑顔を覚えていよう)


 リリは、最後まで泣かないと心に決めた。




「これ美味いっ‼」

「中身はカレーよね?」


 リリの鍋に残しておいたカレーでカレーパンを作った。


「うん。これは良いな。携帯食にしたい」

「リリ。作り方を教えてくれないか? 紀高にも食べさせてやりたい」


 カレーすら知らなかった面々がカレーパンを美味しそうに食べている。それが嬉しくてリリは思いっきり笑った。


「カレーパンって言うの。パン生地とカレーの残りがあれば出来るわ」


 リリは料理レシピも教えておかなければと思った。ステータス画面の未習得を埋めてロディとサラに託したいと思った。


(サラは里道と家庭を築く。そうすれば光神の里の生き残りには料理レシピは伝わる。ロディには……私の料理を覚えていて欲しい……。私が居なくなったら悲しいだろうけど、私の料理を覚えていて欲しい……)


 いつまでも……と言う訳にもいかないとは思う。もしかしたらリリが消えたら忘れるかも知れない。それでも、生きた証を残したいとリリは強く思っていた。








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