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106話


(リリは人を助けて涙を流せるんだ……。まともな食事も出来てなかっただろうって、ちゃんと考えてやれるんだ……。本当、良い女だな)


 ロディはジッとリリを見詰めた。笑顔で食事の準備をしているリリの周りには人質となっていた人達が居た。中には次期里長のリリに涙を流しながら礼を述べている人も居た。


 ゆっくりとリリに近付き声を掛けた。


「リリ、俺も手伝うぜ。何を作る?」

「ロディ。そうだね……。ロディは魚肉団子入り鍋作って。私はおにぎり作るよ」

「任せろ」


 ロディは道具袋から一番大きな鍋を取り出した。


「リリ〜。私は?」

「サラには甘い物をお願いするわ。多分、糖分足りてないと思うから」

「そうね。かどわかしたヤツラが甘い物を食べさせてくれる訳ないよね」


 サラは道具袋から果物や蜜を取り出していた。


 竹富と里長は、比較的元気のある大人から色々と情報を聞いているようだ。幼い子供も何人か居た。暇があれば走り回るような年頃だろうが、長い間監禁されていたからか元気がなかった。


 リリは紀高に子供達を集めるように指示をした。


(子供は子供同士って言うもんね)


 紀高は里道の弟としてNPCの中でも名前付きとして動いている。他の子供達には名前すらないだろう。


(とりあえず紀高に任せよう)


 紀高はバラバラに座っていた子供達を集めるとリリの前にやって来た。


「リリ様、これで全員です」

「うん。ありがとう、紀高。」


 礼を言われた紀高は頬を赤くして笑った。


「みんな、辛い思いしたね。もっと早く気付けていたらって思う。ごめんね。で、我慢していたみんなにとりあえずこれを飲んで欲しいな。お腹減ってるだろうから。食事の準備が出来るまで、ね?」


 リリは道具袋の中からヒメウズの近くの温泉の所で採って絞っておいたオレンジもどきのジュースを一人一人に手渡そうとした。


 子供達の顔が輝いたが、誰一人手を出そうとしなかった。


(え? 何で? あ……もしかして、私が次期里長だから?)


 すると紀高がスッと手を出した。


「リリ様、ありがとうございます。いただきます」

(あ〜。この子、頭良いわ。自分がお手本を見せれば人が続いてくれるのを知ってる)


 紀高を見て次々と子供達がリリからオレンジもどきジュースを受け取った。


(こう言う子が次期里長にはピッタリよね。あの悪代官面クソオヤジじゃなくて)


 紀高は小さな子供のジュースの栓を開けてやっていた。


(うん。決めた)







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